福島県教育センター所報ふくしま No.110(H06/1994.3) -028/038page

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対人不安から集団不適応に陥った生徒の事例

1.はじめに

この事例は,強い対人不安から集団の中で生活することに苦痛を感じていた中学3年生のA子が,医療機関と教育センター,学校の連携を図りながら指導援助したことにより,改善されていったケースです。

2.問題の概要

A子は,控えめな性格で友人は少ないが,成績の面では優秀な生徒である。しかし,中学2年生の3学期から,全校集会などで腹痛を訴え保健室で休むことが多くなり,成績も下がり始めた。特に集団の中にいるときの緊張感が高く,A子も,「高校入試のとき,大丈夫だろうか」と心配になり,3学期終了後,学校からの紹介で教育センターに相談に訪れた。

3.A子の家庭環境

<祖父>厳格で心配症
<父>仕事熱心まじめで無ロ
<母>人づき合いは苦手
<妹>外向的 活助的
<祖母>幼少児期の養育者

A子の家庭環境

4.A子の生育歴から

対人不安を理解するために,生育歴から自我の発達の経過を考えてみます。

(1) 幼少児期

・共働きだったため,祖母が養育の中心。
・祖父母とも心配症で,過保護過干渉。
・家の中で一人遊びが多い。
・反抗期もなく手がかからない。

(2) 小学校4年生まで

・友人もなく,消極的。
・集団で活動することは好まない。

(3) 小学校5,6年生

(小学校5年生のとき,祖母が亡くなる)
・親友と別れ,孤立傾向が強まる。
・この頃から腹痛が気になり始める。

(4) 中学校入学後2年生の2学期まで

・集団場面での腹痛が強まる。
・学校でトイレに行くことも負担になる。
・成積に対するこだわりが強まる。
・「自分がいるとみんなの迷惑になる」と感じ,集団場面を避けるようになり,ますます孤立化していく。

(5) 中学校2年生の3学期以降

・級友とのトラプルが発生。1週間ほど不登校になる。
・腹痛が強まり,初めて母親に相談する。
・内科医の診療を受けたが,異常はない。
・全校集会には参加できない状態になる。

5.面接を中心とした指導援助の経過

(1) 1回目のA子・母親との面接より

A子は「多くの生徒が集まるところでは緊張しておなかが痛くなること」を相談の理由にあげ,「そのことが気になり勉強に集中できない」と 集団場面に適応できていないことが最大の悩み であると訴えた。


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