福島県教育センター所報ふくしま No.110(H06/1994.3) -030/038page
(5) 医療機関,およぴ学校との連携
医療機関で, 『自己臭恐怖症』と診断 され,投薬治療を受けた。教育センターでの面接はそのまま継統することにした。
また,A子の 学校における環境調整 を図ることが必要と考え,担任との話し合いを持った。担任は,A子の対人不安について「そんなに悩んでいたんですか」と驚いた様子を見せ,A子の心情を十分理解してくれた。その上で,「席を一番後ろにすること」などの手だてをしてくれた。
(6) 5回目のA子の面接より
投薬治療と環境調整により,以前より表情も明るくなった。「席が一番後ろになったので安心して授業が受けられるようになった。中間考査は頑張りたい。」と言う。
最も気になる症状だった「おならが漏れること」については,「軽くはなったけどまだ時々漏れることがある」という。
一方,交友関係においては,「結局は自分から友達をつくっていくしかないんですよね」と言い,友人宅で一緒に勉強をするなど,無理のない範囲で, 積極的に働きかけ ていくようになった。
6.まとめ
このような神経症的な症状がある場合,対人不安は深刻な状態なので,医療機関との連携は欠かせません。
A子の対人不安は,思春期の問題として考えることができます。祖母や友人などとの「別離」を契機として,症状が強まっているのが特徴です。面接の中でも学校や家庭における人間関係の話題が多く,この側面での指導援助の必要性を示しています。
対人不安から集団不適応に陥った児童生徒への指導援助の留意点 1 人間関係の悩みは,人聞関係で癒してあげることを基本として考えること ○ 教師が,子どもとの間に,温かい人間関係をつくりあげ,体験させていく。 ○ 子どもに対するカウンセリングを行い,教師が,その子どもを全面的に受容することで,子どもの自己受容を促進し,肯定的な自己理解を深める。 2 家族に対する適切な援助を行うこと ○ 母子関係をはじめとする,家族内の人間関係を温かいものにする。 ○ 思春期の子どもの場合,同性の親とのかかわりを深め,「性的同一性」を確立するためのモデルになれるよう,同性の親をしっかりと支える。 3 学校や学級における環境調整を図ること ○ 本人の対人不安を共感的に理解し,居心地のよい環境を確保する。 ○ 交友関係に配慮し,友人との好ましい人間関係を促進する。 4 専門機関と適切な達携を図ること ○「友人恐怖」的傾向が強い場合,専門機関と連携を図ることも必要である。