福島県教育センター所報ふくしま No.113(H07/1995.2) -002/038page

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特 集 I

福島大学教授  臼井嘉ー

≪巻頭論説≫

教 材 の「 裾 野 」 と「 核 心 」と 教 師 の 目



福 島 大 学 教 授 臼 井 嘉 ー



1 教材の「裾野」と教師の目

ある算数教科書の「小数」の箇所を開くと大略次のように記述されている。

* 水とうについているコップのかさをはかったら,右の図(省略−引用者)のようでした。このコップのかさのあらわしかたをしらべましょう。

1. 1dl の1/10は何dlでしょうか。

1/10dlを0.1dlと書いて,れい点一デシリットルと読みます。
1/10dl=0.1dl
0.1dlの2ばい,3ばいは,0.2dl,0.3dlと書きます。

2. コップのかさは何点何dlでしょう。

以上の箇所は「小数教材」とも呼ベるものであり,教科書に掲載されている教科書教材でもある。

この「小数教材」を例として,「教材研究」に切り込む視点についてまず述ベてみたい。

おそらく教師志望の学生もしくは新任の教師に何の指導もしないで「教材研究」をさせると,この教科書の順序にしたがって教材の展開をとらえることになるだろう。そして dl の読み方,分数と小数の関連を教えること,コップのかさを読み取ることを通して教えるように「教材研究」がなされて授業が進められることになるであろう。

私がこれから述べてみたい「教材研究」とはこのような教科書教材の表面をなぞっていくようなものではない。しかし残念なことにとりわけ算数などのような「読み・書き・算」のような教科の「教材研究」の場合,このような表面的な「教材研究」に沿ってややもする「たたき込み」「訓練する」という指導がなされることがある。

もっともこのような問題は決して以上のようないわゆる基礎学力教科にとどまらないすベての教科にも存在している問題であり,それゆえに広く各教科の「教材研究」のありかたが問題とされるのだと思う。

私は「教材研究」に切り込む視点としてまず教材の「裾野」に目を向けるような教師の目を重視している。

このことを上記の「小数教材」を例として述べると次の通りである。

すなわち教材の「裾野」に目を向けることとは,教材を教科書教材にとどまらない広い視野から教材をとらえるということである。

ただし,その広い裾野に目を向けるためにも当然ながら教科書教材そのものの内容を分析しその特質をとらえることが必要不可欠な要件となる。たとえば上記教科書教材の特質は,1.液量という素材が使われその液量ははじめから十等分された dl ますの


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