福島県教育センター所報ふくしま No.113(H07/1995.2) -008/038page
特 集 II
教 材 研 究 の 新 し い 視 点
編 集 部
前号,河野先生の巻頭論説の冒頭に「個々の子どもが確かに学んだとの自覚を持てるようになることは,授業の基本です」との指摘がある。「確かに学んだ」との自覚を持つことは,単にものを知ることができたとかやり方が分かったということではなく,学ぷべき教材内容の確かさや必然性(教材の核心)に気づき,その意味が分かったということである。
従って,子どもが確かに学んだとの充実感を持てる授業を創るためには,教師自らが子どもが学ぶべき教材の核心まで深く追求し,その意味が分かる学ぴを体験するとともに.その教材に対して子どもがどう問いかけ学んでいくかの深い分析・追求が教師に求められている。この両面から教材を吟味・検討していくことが,今求められている「教材研究」であろう。
今回は,この「教材研究」に視点をあて,子どもが「確かに学んだ」との実感が持てる授業を実現するには,どんな角度から教材に きりこんだら いいかを考えるために特集を組んだものである。
1 教材内容を教科のねらいに沿い,教材のもつ意味の重層性(教材の核心とその広がり)を深く多面的にとらえる。
「子どもがこの教材に接したとき,どんな『問い』(問題)を持つだろう」との視点から教師が教材を深く掘り下げ,子どもの『問い』を数多く見つけ出す研究が大切である。そのことが教材の持つ核心と広がりを理解することになり,子どもの追究に柔軟に対応でき,確かな授業創りにつながっていくからである。
2 教材のもつ微細な構造(トポグラフィという)を分析・追求することにより,教材の全体構造を明らかにするとともに,教師自らが自分なりの教材解釈を持つ。
「子どもが学ぷこの教材はどんな価値があるのだろう」との視点から,教材を細部にわたり分析し,その微細な構造まで追求することは,教材のもつ全体構造をとらえることであり,教材の価値に教師自らが気づくことである。「ぜひ子どもに学ばせよう」という教師の思いが高まったとき,教材は子どもの学びの対象(学習材)として価値を持つようになる。
教材研究の新しい視点とは,教材への子どもの多様で深い「問い」を探ることと,教材の核心とその広がりを追求し,教師自らの教材解釈を深めることにある。
以下,その教材研究の事例を,国語,数学,英語の3教科の考え方について具体的に述ベる。