福島県教育センター所報ふくしま No.113(H07/1995.2) -009/038page
文 学 教 材 に お け る 教 材 研 究
1.「問い」からの授業子どもが作品に読み入っていけるか,どう読み入っていけるか,そうした読みの構えや取り組み方は,個々の子どもによって違う。また,文章の叙述に即し「なぜだろう」「もしかして〜ではないのか」「これはどういうことなのか」というように,文章と対決しようとする時の対象,その内容や深さなど子どもにより千差万別である。
文学教材の読み取りの授業は,こうした個々の子どもの持つさまざまな条件を整えどの子どもにも「深くわかりたい」という対象を明確にすることが肝要となる。
ここに,子どもが問い,子どもが答えるという授業実践がある。わかることからの授業ではなく,わからないことからの授業すなわち「問い」からの授業である。
教材<祖母>第6学年
T 何度か読んでごらん何か感じるかな? P やさしくて,どこかさびしく暗い P 何か理由があって,孫は祖母に預けられていたのだろうか? P 孫は内気で弱々しそう祖母は孫をやさしく大事に育てているようだ P わからないところがいくつもある T なにが,どうわからないのか? P 連のくりかえし,蛍と月光の対比 P かきあつめて,沢山くれたことの意味 P 桃の実のやう,という表現 P 合わせた手でなく,掌という表現 「沢山な」の「な」は連体助詞の「の」と同じであると説明し,子どもの捉えた問いを板書する。学習課題の確認である。
学習課題(学習問題)は「深くかかわりたい」対象である。ここでは「蛍,月光」「かきあつめて」「桃の実のやう」「合わせた掌」等の言葉であり,「沢山くれた」ことの実体,対比した「連」の形式である。
解決の糸口を見つけようと沈黙した中で最初に「そうか,わかったぞ!」と発した言葉は「合掌」であった。「合わせた掌は合掌なのか」という発言は「祈り」という問いを派生させ,追究は一気にはずみがついた。祖母がくれた沢山の「蛍,月光」の実体は次第に明晰なものになっていった。
子ども自らが重い課題にぶつかっていく「問い」からの授業は,深い読みを体験させ,子どもの見方,考え方,感じ方を大き