福島県教育センター所報ふくしま No.113(H07/1995.2) -012/038page
教 材 を 追 究 す る 幅 広 い 目( 数 学 )
1.教材研究の切リ込みの視点新しい学力観に立つ数学教育においては,数学を出来あがったものとして指導するのではなく,生徒自らが数学を追究していくという立場に立ち,日々の実践をしていかなければならない。
そのためには,生徒の実態に即した価値ある教材を選択あるいは開発し,研究していくことから始まるだろう。それには次のような2つの視点から迫る必要がある。
第1の視点は,教材内容へのアプローチの仕方である。教材として取り上げる内容は教科書に沿ったものであるが,時間的な制約などから,教科書に載っているものすべてというわけにはいかないだろう。ここに,生徒にとって価値ある教材を選択しなければならない必要性が生まれてくる。
例えば,下記の2つの問題を見ていただきたい。1(マル1)は教科書にある問題,2(マル2)は平成6年度福島県の高校入試問題である。
高校入試における2(マル2)の問題の正答率は約13%で,受験生にとっては難しかったようである。
これらの2つの例から明らかなように,数学の問題は必要十分条件,すなわち同値関係を満たせば,まったく逆からの見方ができるということである。日頃の教材研究においては,問題の同値関係に留意し,教材を結論から仮定をながめるといったアプローチの仕方にも目をくばっておくことが必要である。そうした教材の見方をすることによって教材研究の幅も広がり,オリジナルな教材開発にも結ぴついていくのである。
これらのことから教材研究にあたっては,教材のもつ価値を十分に吟味して,生徒の実態を考えながら,教材へのさまざまなアプローチの仕方を研究し,生徒とともに数学を追究していけるような授業を行っていかなければならない。