福島県教育センター所報ふくしま No.113(H07/1995.2) -021/038page
の誘いに対していやと言えず,ずるずると引き込まれていった。
(2) 保護者
母親はA子の帰宅時間までには仕事先から帰っている。しかし,素直で成績のよい弟の面倒ばかりみて,反抗的なA子との会話はほとんどなかった。父親は月に二回帰宅して家では体を休めるだけで,A子には勉強のことで口うるさく言うだけだった。家庭の雰囲気は,あまり温かいものとはいえず,神経質な父親が何かにつけて母親をどなりつけた。母親も負けず嫌いで父親に対して一歩も引かなかった。A子は両親のけんかのたびに身の縮む思いをしストレスがたまっていった。
(3) 学校
学校でのA子は,それまで何一つ問題のない生徒であった。担任はA子がふだん学校で無口な反面,家庭で長電話をしていることや家庭での両親の激しい口論等については全く知らなかった。学校は,A子の気待ちや家庭状況等について十分把握できなかった。このため,A子に対する温かい言葉かけや教育相談の必要性を感じていなかった。
5 指導援助(1) 本人に対して
<担任から>
○ 本人の心の安定を図る ・A子のつらい気持ちをまず聴くことに専念し,A子が心を開くように努め,信頼関係の再構築を図った。
・テレクラで性交渉まで持ち,自暴自棄になっているA子を叱責したり,責任を追求したりせず,A子の考えを受容・支持しながら将来就いてみたい職業や理想の男性像や女性像について話し合った。
<養護教諭から>
○ A子へ性の指導
初めの頃のA子は,半ばやけ気味になっていたが,養護教諭のやさしいことばかけに次第に心を開き始めた。
妊娠や避妊などの性知識に欠け,雑誌の断片的な知識しか持っていなかったA子に対して,養護教諭は体のしくみやエイズ,妊娠,出産,望ましい男女関係などを保健教材や体験談に基づいて指導した。
A子は,養護教諭に性交については自分が望んだものでなく好奇心と寂しさによるものであったことを話し始めた。
<学年(教科担任)から>
○ A子ヘの学校でのかかわり ・A子に対しては特別扱いすることなく,ふだん通りに接することとした。但し,細かい観察をして,A子に変化があれば但任に連絡することにした。また,今回の問題に関しては,地域や他の生徒には知られて