福島県教育センター所報ふくしま No.113(H07/1995.2) -022/038page
いないので秘密保持に配慮した。
(2) 保護者に対して
<担任から>
○ 両親の気づきを促す ・両親はA子の行動を知り愕然とした様子であった。担任の家庭訪問では両親の養育態度について責めたりせずに,今後A子がいかに目標を持って生活できるように援助するかを話し合った。
動転していた両親は落ち着きを見せ始めて担任の助言も受け入れてくれるようになり,家庭に明るさやA子を受容する雰囲気がなかったことに気がつき始めた。そこで両親とともに,親としてA子に何ができるかを話し合い,傷ついたA子を温かく励まし続けるよう勧めた。
(3) 学校として
○ 実態把握と再発防止 ・いままでテレクラについての実態調査をしていなかったので早急に実施し,同時に警察や地域の協力を得て違法看板の除去や電話ボックスの掃除,家庭に配られるチラシを子供の目に触れる前に処分するなど健全な環境づくりに努めた。
・教育相談的なかかわりの必要性について全教職員で共通理解を図った。
6 指導結果両親に対するA子の反発は,すぐに解けたわけではなかった。両親への援助の結果家庭はその機能を徐々に取り戻してきた。
担任はA子に対して叱責することなく,将来もっといい人との出会いがきっとあることを話した。A子は受容的に話す担任を受け入れ,自分の将来を肯定的に考えるようになった。
同時に学年の教師が,温かく励ましながらかかわった結果,A子は心理的に安定してきた。さらに,養護教諭と継続的に性に関する話し合いを行ったことで,性交渉についても後悔するようになった。現在は,保健室での養護教諭との会話を楽しみに登校している。まだ不安定さの残るA子ではあるが,学校としてのできうるかぎりの援助で改善の方向にあるといえる。
[ 性非行の援助指導の留意点 ] ○ 家庭や学校で身の置き場がなく,その寂しさから性非行にはしる児童生徒が少なくないことから,児童生徒に家庭や学校での所属感を持たせるための配慮が必要である。 ○ 従来の性教育は中絶や性病の恐ろしさを強調し,性的トラブルの防止に力点が置かれてきたが,今後は,正しい性情報を積極的に示すことが大切である。 ○ 性非行の問題は,児童生徒にとって千差万別である。画一的な指導にならず,問題の本質を見極めながら,本人・家族に適切なアプローチをすることが必要である。 ○ 児童生徒に対して,性に関する正しい判断力を高めるための指導が必要である。