福島県教育センター所報ふくしま No.113(H07/1995.2) -030/038page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

2. K子について

*個人の記録から 教師の感想 ○ 演習での教師の援助 ☆
本人の感想 * 最近,特に変わった様子 ※

回数 演 習 で の 様 子 教師の援助と観察
自己評価・・・まあまあ1,あまり2
感想・・・*あいさつゲームで目を合わせたとき,無視してあいさつしてくれまい人がいた。
☆とてもぎこちなく,自分からあまり動こうとしなかったので,誘導してあげた。
自己評価・・・とても4
感想・・・*相手に対してとても温かい気持ちを持てるようになった。
※前回の演習で,みんな認められたことが励みになり,友達に自分から話していた。
自己評価・・・すべて「とても」
感想・・・*一緒に組んだ友達ととても仲良くできた。
※わがままが少なくなり,グループ活動にもためらいなく参加するようになった。
全体を通して 自己評価・・・変容の質問17項目のうち,13項目に○をつけた。
感想・・・*4回目のゲームで人を信頼できるようになった。
○4回目のゲームあたりから友達への見方が変わったし,きどった様子もなくなって,自分自身も変わろうと努力する態度がうかがえた。

*エコグラムから
エコグラムから

人の顔色を見て行動していたが,本来の自分が出せるようになり,周囲へも優しく接するようになった。

*最近の様子から

周囲から,「やさしくなった。」とか「M子さんからみんなのところに入ってくるようになった。」と言われるようになった。
また,担任の先生からも,「変につんとするところがなくなり,素直な気持ちが現れてきたし,周囲へのやさしさや奉仕的精神も見られ,以前とずいぶん変わっていることにおどろいている。」という感想が聞かれた。

4 研究のまとめ

(1) 実態調査から,学校不適応意識を持っている児童が80%以上いるが,そうした意識は,友人関係の問題から生まれていることが分かった。

(2) 学校不適応意識の多くは,対人関係の問題に起因していることから,信頼し合える人間関係づくりを目指したグループ・エンカウンターを用いた援助を行った結果,学級で児童間の交流がより活発になり,個々の児童の不適応意識を和らげることができた。

(3) K子を含めた抽出児のような学校不適応意識の強い児童は,否定的に友達を見ており,自分も嫌われているという思い込みをしている傾向がある。このような児童に対しては,意図的なグループ・エンカウンターを通した援助とともに適切なことばかけを行い,自分の思い込みに気づかせていったり,友達の見方や自分自身のイメージを変えてやったりする援助が大切である。

5 今後の課題

(1) 今回の研究は,実施期間・時期・演習内容・演習の量等比較検討を行っていない。より効果的な援助を行うために,グループ・エンカウンターの演習内容・方法をさらに研究するとともに,日頃の児童との教育相談的なかかわりについても研究を深めたい。

(2) 不登校の児童を出さないためには,定期的に児童の内面に目を向けた,より適切な指導援助が必要である。その際,できるだけ実態に即した児童の持っている学校不適応意識を把握する必要があると感じた。そのため,今後,調査の内容や方法についてさらに検討したい。

* 参考文献

学級経営実践マニュアル 教室はよみがえる 小学館
教師と生徒の人間づくり 1巻〜4巻 レキ々社
エンカウンター 誠信書房
エンカウンター・グループ 創元社
ソシオメトリックテストの理論と実際 日本文化科学社


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は情報提供者及び福島県教育センターに帰属します。