福島県教育センター所報ふくしま「窓」 No.118(H08/1996.7) -014/042page
◇シリーズ
「豊かな学力」を育てるために
−新しい時代への授業を求めて−
21世紀に生きる児童・生徒に、私たちはどのような授業をすればよいのでしょうか。
社会の絶え間ない変化、さまざまな新しい課題等を想定し、児童・生徒の生き方を模索し、授業を 創り出していくことが必要であるといえます。社会の変化や課題を見据えながら、児童・生徒に主体 的に生きていくことができる資質や能力を培うこと、このことが私たちにこれまで以上に強く求めら れているのではないでしょうか。
全教連(全国教育研究所連盟)では、第15期の共同研究のキーワードのひとつに、21世紀を見据 えた学力の在り方として、「豊かな学力」をあげています。
それは、現在実践されている新しい学力観に基づいた教育を推進、発展させ、新しい時代に予想さ れる社会の変化や新しい課題に対応して、児童・生徒が主体的に生きていくことのできる資質、能力 の育成をめざすものです。
今までにもまして一人一人の児童・生徒のよさが生き、主体的に取り組み、学習の過程の中で自己 教育力がより培われるような授業の在り方が強く望まれます。私たちはこれに応えるべく、より一層 授業の改善・創造に取り組まなければなりません。
今回から3回にわたって連載予定の本シリーズは、このような期待に応えるために、ひとつの視点 を提供しようとして企画したものです。
第1回 「問い続ける力」を育てる算数・数学の授業
1 360年間・フェルマーの定理
360年間解決できなかった「フェルマーの最 終定理」の証明を、1994年、ついにやりとげ たのが、米プリンストン大学数学科教授アンド リユー・ワイルズ氏(当時41歳)である。
ワイルズ氏は、証明をやり遂げるまでに、次 のような経過をたどった。
- 「10歳で問題を知り、大学時代に取り組んだが、歯が立たず、数学者になってからは遠ざかっていた。」
- 「別の学者の関連論文が出た8年前、誰にも知らせず、孤独な思案を再開した。」
- 「2年前、英ケンブリッジ大での講演で成功宣言したのに、半年後欠陥が見つかった。」
- 「1年前に突然、着想がひらめいた。」 ワイルズ氏は、実に32年間、まさしく「問い 続けた」ことになる。さらに、ワイルズ氏の陰 には、フェルマーの定理に360年もの長い間、 問い、挑み続けた人たちがいたわけであり、こ れは驚くべきことである。
2 「問い続ける力」を育てるための授業のまとめ方
(1)肯定的な自己評価を促すまとめ方
算数・数学科授業案の学習活動の最後に、 「本時のまとめをする。」「次時の予告を聞く。」 と私たちは何気なく書くことが多い。
この「まとめの学習」では、単にまとめるだ けでなく、学習した事柄を新たな問題に対して 適用し、その考えのよさを味わい、自らの学習 過程を肯定的に振り返る場にしたい。 「前と比 べてこんなことができるようになった。」「こ んなアイデアが使えた。」 という肯定的な自己