福島県教育センター所報ふくしま「窓」 No.121(H09/1997.7) -004/042page

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立していると言われる数学だからである。教科目標をかかげることは省くが、現在とくに中学校では多くの生徒にとって最も苦痛な教科になっており、「進んで活用する態度」とはほど遠い状態にあるからである。

 数学をはじめ、現在の教科が学ぶに値するとするならば、それらの教科目標はほぼ現在のような内容にならざるをえないであろう。

 それを達成するために、今、最も必要なのは指導内容の「厳選」であることは、中教審答申を待つまでもなく、大多数の教師が日々実感していることなのである。

4 「厳選」は「生きるカ」育成の大前提

 「生きる力」を育成するためには、現在の授業は質的に転換されなければならない、ということも今や異論の余地はないであろう。そして、そのためには指導内容の「厳選」が大前提になるのであるが、もちろん、それだけで「生きる力」が育成できるわけではない。つまり、教科目標が自動的に達成されるわけではない。

 しかも、そのような授業への取り組みは、「厳選」されるのを待って始めるのではなく、すでに「新しい学力観」を踏まえた取り組みとして始まっているのである。そして、「厳選」されていればもっと充実した授業が展開できることは、ほとんどの教師がすでに実感していることなのである。

 例えば、中学校理科は二つの分野に分かれているが、第一分野をみると、(1)「身の回りの物質とその変化」から(6)「運動とエネルギー」まであり、それぞれに相当の内容が含まれている。第二分野も同様である。これでは、じっくり「観察・実験」をする時間的余裕はとれず、「科学的に調べる能力と態度を育てる」ことなど困難だと言われているのである。当然であろう。そこから大部分の生徒は、理科でさえ「暗記科目」だと見るようになっているのである。

 理科でも「生きる力」の育成を大切にし、理科好きの子供を増やすには、教科目標が達成できるような授業に質的に改善することが不可欠である。それが、指導内容を多くこなしたからといって達成できるものでないことは、もはや議論の余地のないことなのである。

5 「生きるカ」を「本時」レベルで

 授業の質的改善のための具体的な手だてとして何よりもポイントになるのは、「生きる力」を「本時」のレベルで明確にとらえることであろあ。

 「生きる力」というと極めて抽象的でとらえどころがないとも言われるが、必ずしもそうではないはずである。文字どおりの「生きる力」は、学校教育以前にすべての子どもがもっているのだから、授業でできることは、より人問らしい生き方につながる(影響を与える)力を育成することである。

 先に見たように、教科目標が「生きる力」に深く関わっているとすれば、次は単元レベルでとらえることが課題となる。これも今日では、かなり行われていることは、研究授業での指導案などからも言えるであろう。そこで、今日、最も問題になるのは、単元目標につながるような学習を、「本時」(日々)の授業でどう展開するかであろう。

 ここで大きな鍵となるのが、「知識・理解」の重層性を日々の授業でどうとらえるかである。もちろん、これは「知識・理解」だけの


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