福島県教育センター所報ふくしま「窓」 No.121(H09/1997.7) -015/042page
この授業において、T2は重点的に個別にかかわる予定であったY子に対して、はじめの机間指導(支援1)で既習(直方体)の形に変形し、公式を用いるように助言をした。2度目の机間指導(支援2)で、Y子がどのようにして直方体にしていいのか分からなかったので立体(具体物)を示した。T2がY子に寄り添いながらY子が操作している姿を見守った。Y子は具体物を見てイメージを確かなものとし、どのような直方体になるのかをつかんだ。Y子は、T2から学びの変容を聞いたT1にも、「よく見つけられたね。」と声をかけられた。
これは、解決の見通しが立たない児童に重点的に支援をし、児童が具体物を操作する中で、何を求めるかがはっきりした事例である。
T・Tには様々な形態があるが、自力解決の段階においては、「分業」により教師の役割をはっきりさせる必要がある。
その効果的な例として、T1は全体的に対応し、T2は重点的に個別への対応をするという方法がある。T2の対応は、「本時はこの児童を重点的に支援する。」「○○の観点を補完する。」などと決めて、支援計画を立て、児童にかかわることになる。
この方法の効果は、授業中に児童の変容を把握することとタイミングよくKR情報をかえすことが可能となることである。さらにT1と情報交換をすることで、児童の理解がいっそう深まることにつながる利点がある。T・T方式の導入により生み出された教師のゆとりは、この事例のように、児童「一人一人」にじっくりと支援する時間にあてられるべきである。
3 おわりに
平成7年度学習指導部研究の中で、「算数の授業中、先生にほめられたことがどのくらいありますか。」という調査結果が下のグラフである。
教師はほめていたつもりでも、児童の側に立ってみると、実に59.2%の児童がほめられていないと感じている。T・T方式は、チームを組んだ教師の働きかけが、一人一人の児童に対して、算数のどの観点を伸ばすかということと同時に、児童の心にどのように響くかということも、問われているのではないだろうか。