福島県教育センター所報ふくしま「窓」 No.122(H09/1997.11) -002/042page
〈特別寄稿〉
外から見える学校
〜こんな学校ならいいな、こんな先生ならうれしいな〜
保原町教育委員会教育長 渡邉 昭
○ 教育課程なんかこわくない〜桜の花は春しか咲かない〜
今春4月、宮城県松島町で会議があり、久し振りに電車を利用した。まさに春燗漫、川辺の公園や阿武隈川の土手の満開の桜が車窓に心地よく映る。私はこのすばらしい景色を独り占めにするのが悪いような気がして、沿線の学校を通過する度、戸外に子供の姿を期待した。しかし、残念ながら福島県境を越えても元気な子供の姿は見られなかった。多分、先生方は、教室の中で教育課程に盛られた内容を、忠実に実践されておられるのだろう。それはそれで結構だが、この時季、戸外の自然に触れさせることもまたすばらしいことだと思うが如何だろうか。自然と触れ合うことで、精一杯生きている小動物や草花との出会いがあり、学校の中では到底知ることのできない新鮮な発見もできるはずである。桜の木の下でみんなと一緒に甘酸っぱい空気を吸ったことさえ、子供にとっては想い出になるものである。教室での授業はいっでも挽回できる。教育課程なんか(オッと失礼)、自然の偉大さから比べたら本当に小さいものである。自然を相手にもっともっと体験学習を取り入れてほしいものである。
私はすばらしい自然を目の前に、25年前の冬、雪の少ない双葉郡の楢葉北小学校での雪合戦を想い出した。理科の時間が体育の授業に早変りした時の子供達の笑顔と、雪と泥をミックスした雪玉を喜々として投げ合っている姿が彷彿として甦る。
自然を愛し、感性をはぐくむ体験学習や自然を相手にした学習の成果は、タイムリーな教師の配慮が欠かせない。桜の花は春しか咲かないのだから………。
○ 教師は授業で勝負するなんて、ケチな考えは捨てよ
●老人保健施設の所長さんの話
当町には、桃花林という老人保健施設がある。所内は勿論、周りの庭や芝生などの手入れが行き届き、お年寄りの機能回復のためには最適の施設である。所長さんは前教育委員長なので、時々お邪魔をしてはお話を聞く。ある時、桃花林を訪問して驚く光景に出会った。元気のいいおじいちゃん2,3人が歌い手となり、それに合わせて、7,8人のおばあちゃんが、ロビーいっぱいに大きな輪を作り、表情豊かに踊っているのである。それはそれは楽しそうであり、生き生きとした動きが実に印象的であった。
所長室でそのことを話したら、「歌ったり、踊ったりしている人は、ほとんどが農業、商業出身者で、歌いもせず踊りもせず、クールな目で遠くの方から眺めている人は、学校の先生や勤めの先輩に多い。」と笑っておられた。更に、所長さんは、「みんなの輪に入って楽しんでいれば、回復も早いのに……」と話してくれた。