福島県教育センター所報ふくしま「窓」 No.122(H09/1997.11) -004/042page
これは、今までの教育の基本であった。学校も、家庭もそうであった。そうしないと安心できなかったし、画一的な扱いをしないと不平等と言われ、場合によっては、差別だと非難されることさえあった。しかし、このことが教育界のみならず、社会全体の進展にも大きな支障をきたし、第3の教育改革の導火線になったわけであり、今後も黙止できない大きな課題となっていることは、ご存知のとおりである。
国語の勉強は不得意だが、算数の文章題は、なぜかすらすら解く子。理科の授業は、じっとがまんの子であるが、プールの時間になると、それこそ水を得た魚のように元気に泳ぎまくる子等を、過去に数えきれないほど見てきた。子供はそれでよいのではないだろうか。
ゆっくり理解する子、朗読だけは誰にも負けない子、折り紙の得意な子、何かあるとすぐに泣き出す子、うさぎの飼育に牛きがいを感じている子、どうしても鉄棒のさか上がりができない了のいる所が学校なのだから。
どの子供も、光り輝くものを持っているのである。
●「うまい、それだ、完壁だ」の一言が、人生を変える
私と野球との関わりは、中学校時代からである。バッテング練習をしているある時、監督から、「そうそう、うまい。それだ、完壁だ。」とチームメートの前でほめられた。それ以来、不得意なアウトコースのボールは打てるようになった。今でもバッティングセンターに行くと自信を持って外角球をライト方向に流すことができる。監督のあの時の一声が自信を生み、以陵の私の野球漬け人生への大きなステップとなったことは間違いない。
子供の能力を的確につかみ、「あなたのここがすばらしい。」と具体的に知らせ、それを信じ込ませることが人切だと思う。教師の一言は、時には人の生き方まで変えさせる響きを持っているのである。
○ すてきな女性との出会い
〜作家幸田文の心意気に学ぶ〜
派遣社教主事として、安達郡岩代町に勤務した頃の話である。NHKのスタッフや樹木専門の写真家と一緒に、作家の幸田文さんが来町された。来町の目的は、岩代町杉沢地内の大杉(国指定の天然記念物。杉では樹高日本一)の周りを幸田さんと写真家が散策をしながら大杉や樹木にまつわる話をして、敬老の日に特別番組「古樹讃歌」のタイトルで全国に紹介するためである。
録画撮りも終わり、新幹線に乗車をするため郡山駅までお送りした。その車中で、私共に話してくれたひとつひとつが実に感激的であった。今はすでに故人になられ大分古いことなので、そのまま再現はできないが、心に残ったものや女史の心意気の一端を紹介してみたい。
1 お話のまとめはどうなさいますか。(NHKのディレクターとの打合せで)
それは私がまとめるのではなく、この大杉がまとめてくれるでしょう。2 大木を見ると、苦難に耐え忍んで生きてきた力強さが感じられ、頭が下がります。
3 森というのは、実生、幼木、青年の樹、生長した樹、老いた樹がにぎやかに楽しく成長して、はじめて栄えるものです。私達は、りっぱに成長した木のみに注目しやすいものです。人間の社会でも同じでないでしょうか。