福島県教育センター所報ふくしま「窓」 No.122(H09/1997.11) -007/042page
室においても、その具体的な実践がなされてい るものと思います。
しかし一方でこんな声も聞かれます。
「個を生かす、個に応じた指導が重要であると言 われ、私も同感であり、何とかそれに迫るような 授業づくりをしなければと常々考えています。で も、何となく『差別している』と受け止められる のではないかなとか、学力差が拡大してしまうの ではないかな………などと思うと、やっぱりクラ スの生徒全員に同じ課題を与え、同じレベルにま で到達させようとしてしまうのです。無理がある とは思いながらも……。」
これは、中学校で頑張っているあるベテラン 教師の生の声です。この声を聞いていて、とて もうなずけるところもありますが、この悩みを 解決していかなければ、個性重視の教育には近 づけないように思えてなりません。
確かにこれまでの教育では、了どもの学びの 過程よりも学びの結果を問う授業が展開されて きた傾向があります。「できたか。できなかっ たか。」ということに目が向けられがちでした。
しかし、結果だけに目を向けていたのでは、 子ども一人一人の個性を育てることはできない ように思います。その子が、どのような考え方 で、どんな手続きをしてこの結論に至ったのか、 ということに目を向けなければ、その子らしい 学習の姿をとらえることもできないし、その子 の個性を発揮した授業にもつながらないと考え ます。
1 個性を伸ばす指導
子どもはその誰もが個性、つまり他の誰とも 違う能力、態度、性格、興味・関心、意欲など 「その子特有のよさ」を持っています。それは 個人差としてとらえられたり見られたりしてい ます。人間として生きていくためには、是非と もその個性を発揮させていく必要があります。
個性を伸ばす指導の充実、推進を図っていく ためには、私たち教師は次のような認識に立っ て指導に臨むことが必要であると思います。一つに、はじめに指導する内容があるのでは なく、まず、多様な個性の持ち主である子ども がいるという考え方に立つことです。この考え による教育は、究極的には子ども一人一人の個 性を伸ばし、自己実現していく子どもの育成に つながるものです。
二つとして、子どもの個性を伸ばすのは、そ の子自身です。子どもが自らのよさを理解し、 そのよさを自らの力で伸ばしていくことによっ て個性はさらに質を高めていく」ことができるの です。私たち教師は、それを支えるべき支援者 であり、強引に指導する存在ではないことを肝 に銘じなければなりません。
2 個に応じた指導
子どもの個性は、性格、身体、学力、経験、 興味・関心、学習の仕方などに個人差としてあ らわれています。
計算をさせても、予定時問の半分もかからず に全部やり終える子どもがいれば、時間がきて も半分しかできない子どももいます。国語に興 味を持っている子がいれば、理科が好きな子ど ももいます。教室に35人の子どもがいれば、教 師にとっては35通りの考え方やものさしと方法