福島県教育センター所報ふくしま「窓」 No.122(H09/1997.11) -008/042page
が必要となります。
このように多様な個性(個人差)をもっている子どもたちに、画一的に同じ目標、内容、方法で指導したのでは、いくら努力しようとも「一人一人の子どもたちに学習を成立させたい」という私たち教師の願いを叶えることはむずかしくなります。
このようなことから、個人差(一人一人の個性)に応じた指導の充実が叫ばれているわけです。
私たちは、それぞれの子どもの個人差に応ずる指導を工夫し実践してきました。しかし、前掲した「教師の声」のように、なるべく個人差を少なくし、他と同じような結果になることを求めた指導に力を注いでいる傾向が強いのではないでしょうか。
これからの教育は、ある意味では個人差が拡大する営みとしてとらえていくことが大切であるように思います。そのように思うのは、私たちができるだけその子に応じた教育をしようと努力すればする程、その子の個性を限りなく伸ばすこととなり、結果として個人差が拡大すると考えるからです。この個人差が拡大する営み(真に個に応じた教育をする営み)が、子ども一人一人の本来のよさや能力を伸ばすことにつながっていくものととらえていくことが、今、私たち教師に求められている指導観、教育観の転換なのです。
(2) 今、なぜT・Tか
先にも述べましたが、子どもは一人一人違った知識や能力をもち、個性的に生活しています。
現行の学習指導要領では、子ども一人一人がこれからの社会の変化に主体的に対応して生きていくことができる資質を養うことを基本的なねらいとして、基礎的・基本的な内容を確実に身につけ、それをもとに自分のものの見方、考え方をもち、個性を発揮して生きることができる力を育てることを主眼としています。すなわち、個の確立、主体性の確立を目指していると言えます。
この学習指導要領の趣旨を達成するためには、個の確立、主体性の確立を目指した学習指導の改善を図ることが極めて重要となります。そこで登場したのが「新しい学力観」でした。
私たち教師は、新しい学力観の描く子どもの姿に少しでも近づくために、従来までのどちらかというと知識の伝達に偏っていた授業から、子ども自身が自ら学び、考える授業への質的な転換が図れるよう努力してきました。このような努力の甲斐があって、確実に私たちの目の前の子どもたちの学びの姿は変わってきているように思いますが、一方では、まだまだ教師主導の一斉指導が多いという指摘もあります。
私たちの授業で、今、改善が求められていることは、同一教材による一斉授業が主流を占めている授業展開から、もっともっと多様な子どもの実態に即して、子ども一人一人が自主的、主体的に学習や生活をしていく力を育てる観点に立って授業を展開していくように授業の質的転換を図る必要があるということです。つまりは、中教審答申のいう「生きる力」を育成する授業の実現ということです。