福島県教育センター所報ふくしま「窓」 No.122(H09/1997.11) -010/042page
しかし、これからの教育においては、これまでの知識や技能等をどの子にも共通的に身につけさせることを重視した教育から、子ども一人一人の興味・関心、能力、適性などの特性に応じて、自らの力によって知識や技能等を獲得することを基本としていくことが求められています。
こどもの能力や適性などに応じた指導、その子の個人差への対応という面からは、従来進めてきた教師一人による一斉指導だけでは十分に対応できないことが多くあります。この一斉指導の改善の方向としてティーム・ティーチングの導入が求められています。
複数教員による協力的な指導(ティーム・ティーチング)を導入することにより、多様な子どもたちに可能な限り対応できるようにしていくことが今、私たちに求められている新しい授業づくりの課題だと言えるかと思います。
2 T・Tで授業を変える
ティーム・ティーチングの導入は、昭和40年前後に、教育内容の高度化、多様化に対応する手段として「教える側の理論」で研究実践が試みられましたが、その後の学習指導要領の改訂でいったん中断し、今度は多様な一人一人の子どもの個人差に応じた指導という観点からティーム・ティーチングのよさが脚光を浴びているということになります。
(1) 「学ぶ側の論理」を優先する
今私たちが求めるティーム・ティーチングは、「教える側の理論」に代わって、子どもの個性への対応をどう図るかに重点を置いた「学ぶ側の論理」を優先することにあります。
もちろん、「教える側の論理」が否定され、消失しているわけではありません。そのことを継承しつつも、子どもの個性をどう伸ばし生かせるかが問われているわけです。一人一人の子どもの個性、よさ、可能性といったものに、私たち教師がどこまで対応できるかという視点でティーム・ティーチングに新たな期待が寄せられているのです。
したがって、多様な子どもの姿に対応できる私たち教師側の“ふところ"を豊かにし、広げることが不可欠の条件となってくると思います。つまり、どのような多様な子どもの個性に対しても、私たち教師がそれをしっかりと受け止めることのできる“広いふところ"がなければ、子どもの個性がはみ出したり、受け入れられずに捨て去られたりすることにもなりかねません。受け入れられないのでは、子どもの個性に応じようもなければ、まして個性を生かしたり伸ばしたりすることもできなくなってしまいます。
“ふところ"は、もちろん私たち一人一人の教師が広げなければならないと考えます。だから、私たち白身の資質を高め、教師としての指導力の向上が強く求められているのです。
しかし、私たち教師一人の“ふところ"には限界があり、私たちの目の前にいる子ども一人一人の個性や個人差に対応できる幅には応じきれないことも多いのではないでしょうか。