福島県教育センター所報ふくしま「窓」 No.122(H09/1997.11) -017/042page
1 ゆれるゆうた君
「明るく、元気」それが、ゆたか先生にとってのゆうた君でした。そのゆうた君が、6年生の夏休み明けから連続して欠席するようになったのです。登校しても、表情はさえず、一人ぽつんと過ごすことが多くなってきました。『どうしたんだよ、ゆうた。何かあったのか?』ゆうた君の寂しそうな姿を見るたび、ゆたか先生は、心の中で、つぶやきました。
ある日のこと、音楽室から、木琴をめちゃくちゃに叩く音が聞こえてきます。ゆたか先生が音楽室をのぞくと、じっと目を閉じ、つらそうな表情で木琴を叩くゆうた君の姿が目に飛び込んできました。『どうしたんだ、ゆうた』ゆたか先生の心臓も、木琴の音とともに高鳴ります、しばらくたち、木琴の音が鳴り止むのを待って、ゆたか先生はゆうた君に話しかけてみました。
担 任:ゆうた君。ずいぶん大きな木琴の音だったね。
ゆうた:………。
担 任:どうしたのかな、最近一人でいるから、心配だったんだ。
ゆうた:………。
担 任:突然、木琴の音が聞こえてきたからびっくりしちゃったよ。
ゆうた:……先生、何かわかんないけど思いっきり叩いてみたくなって…。
ゆうた君のお母さんから「どうしたらいいのでしょうか……」と不安な思いを伝える電話もありました。『何かわかんないけど』か…ゆたか先生は、ゆうた君の ゆれる心をもっと知りたい と思いました。
2 生徒指導委員会にて
ゆたか先生は、教頭、生徒指導主事、学年主任にゆうた君の現在の様子を話しました。
「先生方から、情報を得ることも必要だね」「保護者と話し合ってみてはどうだろう」などの助言を受け、ゆたか先生は、広い視野からゆうた君を理解していくことの必要性を感じました。
話し合いの結果、 「ゆうた君への理解を深める」 ことをねらいといて、生徒指導委員会を開くことにしました。
生徒指導委員会の中でゆたか先生は、ゆうた君の現在の出欠の状況と、表情がさえず一人ぽつんと寂しく過ごす様子、目をじっと閉じ、つらそうな表情で木琴を叩いていたゆうた君の姿、『何かわかんないけど……』とつぶやくように言った言葉等、ゆうた君の気持ちを一つ一つかみ締めるようにゆっくりと話しました。
養護教諭:ゆうた君、保健室で『疲れたあ…学校がなくなったらなあ……』って……。
担 任:えっ……ゆうた君がですか。………疲れたあ……か。
学年主任:清掃のときも、窓ガラスを拭きながらぼうっとしてることがありましたね。