福島県教育センター所報ふくしま「窓」 No.122(H09/1997.11) -020/042page
研究紹介
児童一人一人のよさを生かし、意欲を引き出す絵画指導はどうあれぱよいか
〜オリジナルの画用紙づくりを通して〜
会津若松市立鶴城小学校教諭 長谷川多恵
1 主題設定の理由
本学級では、昨年度、絵を描くことは好きだが自信を持てない児童が多いという実態から、つまずきや不安に対処するために個人カルテや学習カードを利用したり、構想の段階を大事にし、「何をどう表したいのか」をはっきりさせてから表現させたりするようにして、自分らしさを大切にして指導に当たってきた。
この結果、児童は自分の思いを大事にするようになり、自分らしい表現をしようとするようになった。しかし、出来上がった作品が「下手だ」「思ったとおりに描けていない」と感じる児童が少なくなく、まだ自信を持てないでいる姿がうかがえた。また、表現方法の選択の幅が狭く、計画性が足りないこと、中心になるものを描いた後の背景処理に手問取っていて、合う色をぬればいいと安易な判断をしがちであることを問題と感じていた。
このような実態を改善していくためには、児童の多様な願いに応えることのできる題材を設定し、様々な表現方法に触れるための参考作品と場を用意すること、失敗を失敗と感じさせない支援を工夫することで、自分らしさを大切にし、意欲的に造形活動に取り組むことができるのではないかと考えた。
そこで本研究では、これまでのように中心となるものから取り組むのでなく、画面全体のイメージを前面に出すためにオリジナルの画用紙づくりから取り組むことで、背景も大切な要素であることを理解し必要な技法を積極的に学ぼうとする姿、出来上がった画用紙から発想して自分の世界を作り上げていく過程(構想)を大切にし、主題意識を明確に持って活動に取り組む姿を目指したいと考え、本主題を設定した。
2 研究仮説
1 仮説
自由な発想と多様な表現のできる題材を設定し、児童一人一人の思いを大事にした支援をしていけば、進んで技法を学ぼうとしたり自分らしい表現をしようとしたりして、主体的に造形活動に取り組むであろう。
2 仮説のための理論
(1) 「自由な発想と多様な表現のできる題材」とは
児童の経験や個性を生かし、いろいろな表現方法を活用することのできる題材のことである。ここでは「わたしだけが知っている○○な空と風」とすることで主題意識を明確にし、オリジナルの画用紙づくりを初めに行うことで自分らしい技法を選択し、発想の手掛かりとしたい。
(2) 「児童一人一人の思いを大事にした支援」とは