福島県教育センター所報ふくしま「窓」 No.122(H09/1997.11) -032/042page

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研究紹介

  高校生におげる画面の構成感覚についての調査

                    教育センター学習指導部 今泉勝行

1 はじめに

1 造形表現の中の構成感覚

 造形表現は、体性感覚と個々の経験に根ざしている。例えば立体感や質感・重さなどの表現には、そのものを実際に触って、持ってみてどんな感触なのか、どのくらいの重さがあるかなどを自分の体を通して関わることが重要になってくる。また距離感や遠近感についても、実際に高い山に登ったり長い距離を歩いた経験や疲労感等を伴って、その表現がリアリティーを帯びてくる。遠い広がりを描いた風景画からさわやかな開放感を味わい、美しい花の絵に感動を覚えるのは、見る人と作者とのそうした共通の体験がべ一スになっている。

 ここで取り上げる構成感覚とは、画面の中に描かれるものの大きさや配置を決定し、全体のバランスをとったり、リズミカルな動きを与えたりする感覚のことである。これは年齢とともに変化、発展していく。構成感覚は画面の骨組みに相当し、様々な展開に影響を与える要素である。それは、各々の造形活動の全過程での気付き、行為、振り返りによって個々の感覚として形成されていく。

2 構成感覚と再現描写カ

 絵画としての、バランスを含む構成感覚を考える時、切り放せないのが個々の描写の傾向である。なぜなら、再現描写力がもたらす物の大きさの認識や立体感、質感等が、描かれた物の人きさや重さを感じさせ、画面上での位置を決定するからである。一般に言う再現描写力は、対象を視覚的にかつ合理的に捉える見方に裏付けられている。これに対して、構成感覚は、極めて身体的、心理的、経験的であって、見えるものとして確認するのは難しい。

 ここでの、「高校生における画面の構成感覚についての調査」は、1つの側面からではあるが、構成感覚を具体的な切り口によって明らかにし、指導のヒントにしたいと考えるものである。またこの調査は、再現描写の傾向を強く持たない生徒への絵画における指導をいかに進めるか、また題材の設定をどうするかという問題を含んでいる。そのために、調査の最初の設問による結果から、描写傾向の違いによって2つのグループに分け、構成感覚と描写傾向との関連性を見ていく。各設問ごとにグループの優劣をつけようとするものではない。

2 調査の概要

1 調査の対象

県内の6高校での美術選択者1年生231名

2 実施の方法

美術の授業時間のうち15分程度、全員一斉

3 設問のねらい

 設問1 描写傾向の判定
 設問2 画面としての認識の傾向
 設問3 形態におけるシンメトリー傾向
 設問4 画面におけるシンメトリー傾向
 設問5 集合と拡散における傾向
 設問6 リズムと統一における傾向


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