福島県教育センター所報ふくしま「窓」 No.123(H10/1998.2) -015/042page
オ 問題のポイントを事前に話し合い、指導方法について検討を加えることで、お互いにいろいろな教え方があることを確認し、有意義な教材研究の時間になる。
○ 個別指導の実際
「3次方程式が解けるようになること」を目標とする授業において、初めにT1が例題を使って因数定理を利用する方程式の解き方を説明した後、問題演習に移った。T1には、一斉指導時の観察から、A男が方程式を解くことに関心はあるが解法を十分には理解していないように見えた。
問題 X3-X+6=0を解きなさい
A男 : Xに一2を入れたらOになったけど、その後どうするの?
T2 : よく見つけたね。
[f(α)=0⇔f(x)=(x一α)g(x)を指して]このαが一2なのだから、左辺はかけ算の形になる。やってごらん。
A男 : (x-2)で割ればいいんだよね。
T2 : ちょっと待って、(x-2)かな?(xーα)のαが一2なのだから…
A男 : あっそうか(x+2)だ。わり算すると……[(x+2)(x2-2x+3)=Oと変形]
T2 : そうだね。わり算もそれでいいよ。
A男 : あとはできるよ。
ところで、最初に入れる数はどうやって見つけるといいの?なかなかうまく見つけられないんだよ。
このように、A男はT2の支援を受けながら問題を解き、新たな質問もしてきた。生徒は、教師が身近にいることで質問しやすくなり、教師側は、2人で指導していることで、ゆとりを持って素早く生徒に対応することができる。
この後、TlとT2は情報を交換して、A男と同じ箇所でつまずいていたり、同じような疑問を持ったりする生徒が多かったので、T1が改めて全体に注意を促し、因数定理を用いた解法についての定着を図った。
4 T・Tにおける評価
通常の授業では一人で評価するところを、T・Tでは複数の目でいろいろな角度から評価ができる。
評価するには、目標を明確にしておくことが大切で、「どのレベルの生徒に、どんな力を、どのように付けさせるか」、「何が、どのようになればよいか」等について共通理解を図っておくことが必要であろう。また、授業中の机間指導や一斉指導の合間にも手際よく評価の交換をし、授業の進め方も、生徒の反応を見ながら臨機応変に対応するなど工夫するとよい。
授業後には、反省や率直な意見交換をして、次時への対応を検討する。このような積み重ねが、より生徒に即した授業展開を保障することになる。
5 おわりに
T・Tというと、授業中の指導のみを想定しがちであるが、T・Tを成功させるためには、「指導計画を立案し、教材を考え、指導を行い、評価(反省)する」ところまでを一緒に協力して行うことが大切である。この一連の過程を協同して行うことで、個に応じた指導の深まりも期待でき、教師の教材観や指導観の研修にもなり、指導力の向上にも繋がっていくことになる。
高校でのT・Tは、今歩き始めたところである。様々な観点からのT・T授業を実践する中で、学習スタイルや興味・関心などを考慮した指導形態や機器活用なども工夫できるものと思われる。併せて、教師自身も充足感や満足感を味わえるようなT・Tを創り上げていくことが大切なのではないだろうか。