福島県教育センター所報ふくしま「窓」 No.127(H11/1999.7) -018/042page

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んな姿があったことを思い出したのです。
 A子の状態はどうだったのかと、今、よく考えてみると、それが不登校のきざしらしきものであったと思えるようになってきました。

1 A子の気持ちをわかろうとするF先生
 〈情報を集めるF先生〉
 F先生は、A子の仲良しのグループの一人一人から個別に最近のA子のようすを聞くことから始め、席の近くの友達にもいろいろ聞いてみました。

友人のM子: 最近のA子ちゃんは、おしゃべりをしていてもつまらなかったみたい。
音楽の先生: 最近表情がさえないので、気になっていたわ。

最近のA子についての情報から、F先生は自分の気付きに対する確信を深めていきました。

〈A子の気持ちに添ったかかわりを求めて〉
 F先生は、その日の放課後、A子の家に電話を入れ、どんな様子かをたずねてみました。そして、母親の不安を受け止めながらも、担任として思い当たるA子のようすなどを伝えました。とりわけ母親には、A子の気持ちを大切にしながら、あせらないでかかわっていくことを話しました。また、明日はA子の好きな手芸クラプがあるということも伝えました。
 そのこともあって、次の日は、A子は母親と一緒に登校できました。しかし、教室には入れず、保健室で過ごすことになりました。A子は、手芸クラプには参加できませんでしたが、届けられた手芸セットをじっと見つめていました。
 この日から、A子の保健室登校が始まりました。毎朝、担任のF先生が保健室を訪れましたが、A子の淋しげな表情が感じられました。
 数日後、保健室の掲示板に折り紙で作られた「あやめ」の花がそっと飾られていました。それは、折り紙の好きなA子が養護の先生と一緒に作ったものでした。
 F先生が掲示板の「あやめ」に気付いてA子をほめてくれました。その時の恥ずかしそうに喜ぷA子の笑顔はとても印象的でした。
 A子が養護の先生のお手伝いをしたり、F先生が持ってきてくれるプリントをしたりしながら過ごす保健室は、A子が自分を生かせる唯一の空間だったようです。
 A子の笑顔が少しずつ見られるようになったのは、そんなことがあってからのことでした。
 それは、数日前の朝の淋しげな表情とはとても対照的でした。

2 問題(背景)を理解しようとするF先生
 〈学級でのA子〉
 何事も最後までやり遂げるA子は友達からの信頼もあり、学級の代表委員をつとめていました。F先生から、「次回の学級会の議題だけど、あなたの考えをまとめておいてね。みんなに発表してもらうから。」と言われ、A子は張り切って準備していました。次の週、学級会の中でA子は自分の考えを発表しました。いつもなら、A子の考えに賛成ということになるところです。ところが、この日は、「A子ちゃんの考えだけで決めるのおかしいと思います。」という発言から、他の人にも聞くことになりました。この時、担任のF先生も、「そうだね。みんなの意見も聞かないといけないね。」と言葉をつけ加えたのでした。


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