福島県教育センター所報ふくしま「窓」 No.127(H11/1999.7) -019/042page
このころから、授業中A子の発表する姿はほとんど見られなくなりました。それに比べて、他の友達の活躍が目立ってきました。
このような中で、A子の自信が揺らぎ始めていったようです。さらに、F先生が自分ではなく、他の人を支持したというショックが、A子をどうしようもない気持ちにさせ、A子の自己否定は生み出されていったと思われます。
F先生は、A子の自信の回復をめざしたかかわりの必要性を強く感じ始めていました。このことを養護の先生に話してみました。養護の先生も全く同じような考えでいました。そこで、F先生は、それぞれの立場から、A子にどのようにかかわることがよいのか、同学年の先生方や校長や教頭、生徒指導主事の先生にもことの次第を伝え今後の援助策について話し合いました。〈家庭でのA子〉
A子は3人姉弟の中でも、聞き分けがよく、一番手のかからないよい子として育ってきました。会社員の父親(38歳)、専業主婦の母親(36歳)、姉(中1)、弟(小3)、祖母の6人家族です。
家の中で本を読んだり、絵をかいたりするのが好きな子でした。きちょうめんな母の躾により、物事を最後までこなさなければならないと思っているところが強く見られます。姉と弟の中にはさまれながら、親に甘えたいと思いながらも常に我慢してしまう子でした。A子がこのような状態になってから、母親はこれまでのA子へのかかわりがどうであったかふりかえることが多くなっていました。そして3人の中でいちぱん手がかからず、楽な子だったということが、むしろ母親のA子へのかかわりを少なくしていたことに気付きました。
3 A子の自信回復に向けたF先生のかかわり
保健室でのA子は、得意な折り紙をやり始めると生き生きとした表情を見せるようになっていきました。サンタクロースなど難しい作品もいとも簡単に作ってしまうのでした。
時折訪ねてくるF先生から折り方を聞かれたり、ほめられたりするととってもうれしそうな笑顔を見せるのでした。
F先生: すごいね。このサンタクロースはどんなふうに折ったのかな。 A 子: 先生、教えてあげてもいいよ。 両親は、F先生から学校での最近のA子の様子を聞き、家庭でもA子のその努力を認めたり、小さな成長をほめたりするかかわりができるように努めました。
保健室でA子が友人のB子の話をよくするようになってきました。そこで、養護の先生と相談し、B子にきてもらうようにしました。
保健室にやってきたB子が授業の様子や友達のおもしろい話をしたりするとA子は声をたてて笑うこともありました。
F先生は忙しい校務の中でも努めて保健室を