福島県教育センター所報ふくしま「窓」 No.129(H12/2000.2) -005/042page
実際に兵隊として戦争に関わった方の話や空襲を身近に体験した方の話は、子供たちの心に響くものがあり、真剣に聞き入っていた。特攻隊の訓練を受けているときの気持ち、爆弾が落ち、その破片が飛んでくる恐ろしさなど、現在の生活では考えられないことばかりであった。その中で、子供たちは、戦争の恐ろしさや愚かさを実感し、今の自分たちの生活がいかに幸せであるかを感じることができた。
(4) 共に考える
「今の社会は平和だろうか」という共通課題のもと、それぞれが追究を深めていった。そこで、平和であると考える側と平和でないと考える側に分かれ、ディベート的な話し合いの場を設けた。戦争中の、命がいつ断たれるか分からない極限の状態と今の社会を比較し、平和であることを主張するA男。戦争中の食生活について調べ、自分たちの生活の豊かさを感じたB子。地雷で足を失った外国の少年を知り、日本は平和であることを話すC男。一方、日本がいくら豊かで安全であっても、他の国が戦争をしていたり、餓えや病気で死んでしまう人がいたら、平和ではないと主張するD男。
その中で、E子が次のように発言した。
「今、この時間にも、世界のどこかで餓えや戦争によってたくさんの人が亡くなっています。そういう人たちがいるのに、豊かで幸せに暮らしている私たちが、平和でないというのはそういう人たちに対して失礼だと思います。」この意見を聞いて、子供たちは迷い、また真剣に考え、新たな追究の見通しをもつことができた。
このように、自分なりの追究をもとに、みんなで話し合うことによって、対象について多面的に考え、より自分自身の考え方を深めることができたのである。
III 研究の成果と今後の課題
1 研究の成果
○ 子供たちが、自分でやりたいこと、調べたいことを明確にもったとき、生き生きと活動に取り組むことができた。教科の学習では取り上げられない課題であっても、自分が納得いくまで取り組むことができ、満足感や成就感を味わうことができた。
○ カードやノートに自分の思いを自由に書かせる活動を取り入れることで、子供の思いや願いを明確にすることができた。また、子供が書いた思いや願いに教師が目を通し、その子供にあった助言や励ましなどをコメントし、子供の活動を活性化するとともに、子供の活動の実態を把握し、次の活動展開を構想することができた。
2 今後の課題
● 子供たちが学びたいことをしっかりともっことができるように、教師がきっかけを与えることで総合活動をスタートさせてきた。さらに、子供自ら、学びたいことを見つけ、取り組んでいくことができるような時間を設けていくことも考えていきたい。
● 子供の思いや願いをかなえようと教師が様々な工夫をし、努力してきたが、それらを全てかなえることができたわけではない。子供の学びは一人一人に成立するものである。より、子供一人一人の学びを尊重し、一層、子供の可能性を伸ぱすために、様々な工夫をしながら、努力していきたい。