福島県教育センター所報ふくしま「窓」 No.131(H12/2000.11) -004/042page

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は大変興味深かった。それは、農業を営みながら民宿を経営し宿泊客に農業を体験してもらうという、所謂グリーン・ツーリズムを実践している父親の仕事をさらに継承発展させながら、バイオテクノロジーを学んで山の植物を大量生産することによって村おこしを目指す、というものである。そして、それを現実のものとするため、自ら福島明成高校を選び親元を遠く離れて、現在生き生きと学校生活を送っているという若者らしく実にさわやかな夢であった。

夢や希望はこの生徒に代表されるように、それを実現しようとする若者の心を絶えず励まし、大きな勇気を与えてくれるものである。ロサンゼルスオリンピックで鉄棒金メダルを獲得し、現在スポーツキャスター等で活躍中の森末慎二氏も、若い頃からの夢を実現させた一人であるが、彼は言う。「オリンピック、それは私にとって『夢』だったものが、いつか『目標』になり、ついには『現実』となったのです。結果として、鉄棒で10点をとり金メダルに輝いたわけですが、苦手なあん馬を克服するより、得意の鉄棒を伸ばせと言われた高校時代、大ケガをして体操を辞めようと思った大学時代、いずれも良き指導者に恵まれたことが、オリンピック出場、そして金メダルにつながったと思います。」(「文部時報」2000年9月号)と。ここで彼は、夢を持ち続けることの大切さとともに、その夢の実現のため支え励ます指導者の存在の重要なことを示唆してくれている。

新世紀を目前にした現在、前述のように、夢を追い続け頑張っている頼もしい若者もいる。しかし、他方、先に紹介した報告書の見出しように今の生活に甘んじている若者や、将来に夢や希望をどうしても持ち得ずに悩んでいる日本の若者たちが多くいるのも事実である。これらの若者たち一人一人にとっても、これからの日本の将来にとっても、自分の将来をもっとしっかりと見据えて自分なりの生き生きとした夢や希望をえがき、日々充実した生活を送ることが何よりも大切なことは言うまでもないことである。と同時にまた、われわれ教育に携わる者は、森末氏の例をあげるまでもなく、若者たちが将来に夢や希望をはぐくめるよう、ひいてはそれに向かって前進できるよう、心をこめて接するとともに絶えず励まし続ける努力を傾注しなければならないと思うのである。そのためにも先ず、「若者たちの夢や希望をはぐくむ」ということを、われわれ教育者自身の夢や希望として、彼等の将来のために全力を尽くすことが大切となってくる。われわれのこうした地道な努力の積み重ねが、やがては日本の将来を卜するに足る若者を育てることになるのである。そしてその時こそ、われわれが胸をはって日本の若者を語れるときなのである。

高城俊春先生のプロフィール
東北大学文学部卒業後、 福島県立高等学校教諭、 昭和58年 教育庁養護教育課管理主事、昭和62年 教育庁養護教育課主任管理主事兼振興係長、 昭和63年 県立四倉高等学校教頭、 平成2年 教育庁高等学校教育課主任管理主事、 平成4年 教育庁高等学校教育課主幹、 平成5年 県立いわき光洋高等学校長、 平成7年 教育庁高等学校教育課長、 平成8年 教育庁参事兼高等学校教育課長、平成9年 教育庁教育次長、同年6月県立福島高等学校長、 平成12年4月より福島県教育委員会教育長


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