福島県教育センター所報ふくしま「窓」 No.131(H12/2000.11) -023/042page

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清水: 和泉さん、どうしたの。
和泉: ……。
清水: もし、なにか心配事があるなら、聴かせてくれないかな。
和泉: ……、私、合唱コンクールの係なんですけど……、練習がうまく進んで ないんです……。
清水: そうか……。それは心配だよね。

耳を傾けてひたすら聴いた後、どうしたらよいか悩んだ清水先生は、学年主任に相談しました。「和泉さんの心配をよく聴いてあげられましたね。学級のことを真剣に考えている生徒がいることを大切にしていきましょう。」学年主任の言葉に、合唱の問題をどうしようか悩んでぱかりいた清水先生はハッとさせられました。「学級のことを真剣に考えてくれる生徒がいる」

清水先生はうれしくなりました。そして、「学級を思う和泉さんの思いと自分の思いをみんなに伝え、これからの学級を考える機会にしなけれぱ…」と思えてきました。翌日、清水先生は合唱、学級への思いを一心に話しました。

合唱コンクール当日。整列が始まりました。

和泉: 先生、合唱うまくできるかな…。
清水: だいじょうぷだよ。あれからみんなで協力して練習できたんだから…。
和泉: そうだよね。先生、頑張るね。

和泉さんから明るい答えがありました。背筋を伸ぱして生徒はステージに向かっていきました。清水先生はそんな生徒一人一人を笑顔で見送りながら、「これからもっと生徒と向き合っていこう。…中山君とも」そう思っていました。

授業の乱れへの対応のために
生徒は学校でも家庭でもゆとりがなく生活し、友だち関係でつまずくなど、不安定な気持ちでいる場合が少なくありません。また、耐性が不足し、感情を押さえられない生徒も増えています。授業や学級の乱れは、そのようなストレスをためたキレやすい特定の子の行動に、うまく対応できない特定の教師に向けられて起こりがちです。
清水先生は、授業や学級の乱れの初期のサインに気付けませんでした。初期のサインを逃さず、 問題の背景や気持ちを理解し、きめ細かにかかわることが大切になります。
清水先生は、問題を抱え込み一人で悩んでいましたが、管理職や同僚の先生方の気付きや支援 により、心が軽くなり、次への行動に結びつきました。教師が互いに話し合える、学校の態勢づ くりが必要です。
清水先生を支える手だての一つとして、教科主任や同教科の先生が教材研究や指導に加わるこ とを取り入れました。具体的に、だれが、どんな場面で、どのような 支援をするのかを明らかにしていくことが大切です。
授業の乱れの原因に、授業がわからない、つまらないという問題があります。一斉型の授業だけ ではなく、生徒の興味・関心を引き出したり生かしたりする、多様な学習形態や指導方法を工夫・ 改善し、続けていくことが大切になります。
教師は一人一人の生徒の思いや状況の理解を積極的に進め、生徒の人間関係を意図的に改善、 向上するよう努める必要があります。


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