福島県教育センター所報ふくしま「窓」 No.131(H12/2000.11) -024/042page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

研究紹介

多様な表現力を身に付けることを目指す構想段階の指導

〜思いをまとめる手だてを中心に〜

福島市立松陵中学校教諭  丹野 隆明

I 主題設定の理由

現行の学習指導要領における美術科の目標は、美術の本質である、生徒が自分の思いや心の内を形や色で表現したり、自分たちの生活を明るく豊かにするものを作り出したり、美しさや創造の喜びを味わったりする活動を重視している。そして、その根幹の「新しい学力観」は造形教育において歓迎されるはずのものであった。しかし・思いを自由に表現するといった面が強調されるあまり、基礎的・基本的技能がややもすると軽視されがちになり、オリジナリティーの重視という言葉とは裏腹に、他者の共感を得られる造形性が伴わなかったり、また、興味本位な流行追従の表現活動になってしまったりして、教科の独自性さえも危ぷまれる状況に至っているのも現実である。

そこで、造形教育によって身に付けた能力や態度がいかに現代社会の中で重要なものであるかを問い直しながら、今日的な造形活動の追究を課題として、本研究に取り組んだ。

本校の実態をみると、教科としての美術に対する関心は決して高いものではないが、各種行事における表現活動への興味・関心は高く、積極的に取り組む姿を見せる。しかし、テーマや目標、課題などから完成イメージを広げたり、自分の考えや想いをうまくまとめたりすることを苦手としており、発想力や構想力は、力を入れて育てていく必要がある。これは他教科においても共通の課題である。

以上のことから、基礎的能力の一つである構想力に焦点を当て、生徒一人一人の資質に応じた指導法を探り、多様な表現力を身に付けさせることをねらいとして本主題を設定した。

II 研究仮説

1 仮説

構想段階において生徒一人一人が成就感を味わうために、グループワーク活動を積極的に取り入れた相互評価を工夫すれぱ、意欲的に表現活動ができるようになり、創作する楽しさを感じながら学習に取り組むことができるだろう。

2 仮説のための理論

(1)構想段階について

本研究の核を企画力・構想力の養成においた。構想することは、一連の過程の中で考えの取りまとめ段階であるとともに、これから表現しようとする動機付けの段階といえる。そこでの方法・技法・評価の工夫を以下の方向で進めた。

・構想段階での活動と作品を等価値で評価する学習姿勢

・生徒が無理なく構想できるようにする支援のあり方


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は情報提供者及び福島県教育センターに帰属します。