福島県教育センター所報ふくしま「窓」 No.131(H12/2000.11) -027/042page
(2) 本題材の有意性について
生徒の意識変容を10項目調査し、その有意性をT検査で検証した結果、わずかではあるが、変化がみられた。これは、造形への関心が若干でも高まったと判断できる。また、下がった項目については、開始前は、安易にできると楽観していた生徒が実際に活動してみると意外に大変だったと感じた生徒が多かったことを示していると判断され、面白いが面倒という複雑な心理が読み取れる。
〔意識調査集計結果〕
A B C D E F G H I J 合計 事前平均 6.10 7.02 7.52 7.67 6.81 5.09 6.73 6.89 6.70 5.38 64.8 事後平均 6.46 6.98 7.16 7.42 7.13 5.47 6.85 6.93 6.53 5.54 66.5 t検査 0.25 0.87 0.12 0.24 0.16 0.18 0.57 0.94 0.44 0.52 0.66 (3) 構想段階について
今回の題材の長所と重複するところがあるが、各班とも一様に積極的に構想作業を行ったと判断できる。出来上がったアイデアボードはていねいに作業されており、中心に添付された決定稿についても全員がアイデアを出した跡が残った。構想段階における重要な要素は以下のようなものと考える。
○ 出来るだけ数多くの発想をさせることやその時間を確保すること
○ 取捨選択の方法を明確にすること
○ 選択した内容を再検討する場面や評価する場面を設けること
(4) グループワーク活動について
事後調査によるグループワークが本題材における有効性を示している反面、いくつかの課題も見られた。
○ プロデューサー的な役割を果たす生徒のいる班は効率的な作業が行われた。
○ 話し合い活動が活発な班は、作品の完成度が高い。
○ 構成人員によっては、作業能率の相乗効果が認められない。
○ 表現の得意な生徒がいる班が必ずしも活動が活発であることは認められない。
〔アニメーション作品〕 ○ 表現の得意な生徒がいる班が、必ずしも作業が速いとは認められない。
これらのことから、グループワークが効果を上げる要因の一つは、コミュニケーションの持ち方と判断される。
V 研究のまとめと今後の課題
1 研究のまとめ
(1) 今回の題材は、企画力・構想力を養うのに効果的なものであり、それが、生徒一人一人の多様な表現力に結び付いたと考えられる。
(2) 構想段階を視覚化することは、制作表現段階で有機的にはたらき、成就感を得る手段として相関が認められた。
(3) 作品制作を通して、美術に意欲的な生徒が増えた。
2 今後の課題
(1) 他題材で構想に関する実践の検証を行う。
(2) コミュニケーションを意識した題材の開発や指導過程の改善を図る。
(3) 生徒の相互評価を客観的に判断するためのより効果的な工夫を行う。
(4) 美術科における「学び」の構えを意識した技術・技能のあり方を検討する。