福島県教育センター所報ふくしま「窓」 No.137(H14/2002.11)-005/036page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

― 「は・っ・し・ん」 〜 センターは今! 〜 

当センターでは、研修の二ーズに応えようと、小学校「総合的な学習の時間」講座および中・高等学校「総合的な学習の時間」講座を開設しました。今回、小学校「総合的な学習の時間」講座で講義いただいた東京学芸大学教授佐藤郡衛先生の小・中・高に関わる講義内容をご紹介いたします。

「総合的な学習の時間」講座講義紹介


『生きる力と総合的な学習の時間』

 東京学芸大学 教授  佐 藤  郡 衛
 


1 総合的な学習の見直し

私が今日お話をしたいのは、一つ目が『総合的な学習の見直し』ということ、二つ目が『総合的な学習の学習活動をどう創りあげていくか』ということです。そして三つ目が総合的な学習で批判されている「活動はあるが思考なし」といわれるように活動だけであって考えが深まっていかない現状に対して、『学習の深まりをつけるためのポイントとは何か』ということです。さらに、評価は、その学習の深まりということと切っても切り離せない関係にありますので、四つ目に『評価』の話にふれたいと思います。最後に、簡単に指導計画の作成の工夫についてお話します。

さて、総合的な学習では「生きる力」という言葉が分かりにくく、なかなかピンとこないという話を聞くことがあります。小学校6年生の総合的な学習の時間の授業実践を見て、「生きる力」とはこんなことではないかと思ったことがあります。

総合的な学習の時間で、子供たちは、いろんな人たちの話を聞いたり調べたりし、高齢者の勉強をしました。学習のまとめで、子供たちは作文を書きました。作文には、「とてもためになりました。」「自分の身の回りにお年寄りがいないけれど、自分が何が出来るか考えたいと思います。」 「今自分に何ができるか分からないけれども、バスや電車にお年寄りが乗ってきたら席を譲りたいと思います。」といった内容が書かれていました。私は、これは授業がうまくいったと思いました。ところが、2週間後に遠足に行ったところ、子供たちは、誰一人席を譲らなかったというのです。

そこで、2学期に特別養護老人ホームに連れていったのです。そうすると子供のことですから、最初「いやだ」と言うのです。ところが1ケ月に2回ずつ子供をそこに連れて行くと、2ケ月後くらいに、子供の様子に変化が見られ始めたのです。単に、一般名詞としての「おじいさん」「おばあさん」ではなくて、○○さんという固有名詞が、つまりあのおじいちゃん、あのおばあちゃんということが、子供の中にはっきりと意識されるようになります。そうすると、初めて子供たちが自分の意志で車椅子を押したりすることができるようになります。

さらに、3学期には、特別養護老人ホームが有料であることから、ここに来ている人たちは非常に裕福であると初めて知るのです。ではここに入所できない人たちはいったいどうしているのか、さらにそのような人たちは、何人いてどうしているのだろうかと、市の老人福祉についての勉強に入っていったのです。

この実践をみていくと、総合的な学習の中で子供につけたい力が何か分かってくるのではないでしようか。
一つは「現代社会を読み解いていく力」があげられると思います。「総合的な学習」内容の


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は福島県教育センターに帰属します。
福島県教育センターの許諾を受けて福島県教育委員会が加工・掲載しています。