福島県教育センター所報ふくしま「窓」 No.137(H14/2002.11)-007/036page
栽培が一番いいんだ。」という結論になっていきました。
その時に、石川県の農村地域にある小学校と、インターネットを通して交流の学習を始めました。すると、石川県の小学生の方から、「そんな簡単じゃない。農薬を使わないで米作りをするのはものすごく大変なんだ。」という反応が返ってきました。すると、子供たちの学習は直線的に自分たちだけで結論付けていたものが、他の小学校との交流学習によって、違う方向に発展していったのです。
こうしたことが複眼的思考であり、多様なものの見方ということになります。こうした力をつけるには、複数の学習材を用意することと意味ある交流学習などを組織することで可能になります。
第三に必要なのは「人をおもいやる力」ということになります。このことを実践を通してお話していきます。
ある小学校の3年生の学級に中国から一人子供が来ていました。授業で、先生は、「200円持ってお菓子を買いに行きました。75円のお菓子2個買いました。おつりはいくらですか。」という問題を出しました。
日本の子供はみなすぐにできました。中国から来た子供は在日1年は過ぎ日常会話はまあまあできるのですが、何と答えたかというと「おつりはない。」というのです。分かりますか。ヒントは中国の貨幣価値を考えてみるということです。私たちは、200円持ってお使いに行くというと、100円玉2枚持っていくことを前提にします。中国から来ている子供は、貨幣価値が違うため10円玉でしかお小遣いをもらうことがないのだそうです。だから、ポケットに10円玉20枚持っていることになります。10円玉15枚出せばおつりはないのです。単純だけれども、私たちにとって大事な話なのです。つまり、私たちは私たちの文化を通しながらいろいろなことを考えていくわけです。
このように様々な文化的背景を持っている人たちをおもいやる力が大切になります。こうしたカは特定の人との関わりの中で、その人をどうやっておもいやっていくのかということです。
四つ目は「人との関係を作っていく力」も必要です。高齢者との関係をどうつくっていくのか、それを子供たちは体験を通しながら学ぶしかないわけです。
四つの力をあげましたが、それらはまだ抽象的です。そこで、自分の学校の子供を通しながら、いったいこれをどうやって具体化していったらいいのかを考えてほしいわけです。その一つの手法としてKJ法などが効果的です。このKJ法についてお話します。社会を読み取る力は自分の学校の子供たちを考えたとき、どのように具体化したらいいのだろうか、知識を構成する力をどんなふうにして見たらいいのだろうかと考えることです。例えば、人をおもいやるカは、表現力とかコミュニケーション能力として具体化してもいいわけです。このように、それぞれつけたい力について、考えられるキーワードをいくつかあげて、そこから共通するものをまとめ上げていくという方法です。その結果、私たちの学校ではこんな目標にしようといったように、先生方でつくっていただきたいのです。
総合的な学習では「生きるカ」の育成というのは、やはり抽象度が高すぎます。かといって具体的な行動目標や行動レベルまでおろすことも問題です。どんなカを子供たちにつけていきたいのかということをみなさんで考えていってほしいものです。
また、人をおもいやる力や人とかかわる力をつけるには、体験的な学習や交流が不可欠です。その力をつけていくための仕掛けをどうやってつくっていくかについて、それぞれの学校の中でどうするかという議論をしてはどうでしょうか。