福島県教育センター所報ふくしま「窓」 No.137(H14/2002.11)-015/036page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

教育相談チーム
  連載 『実践 学校教育相談』


ADHDの子への指導で悩んでいませんか?

〜よりよいかかわりを進めるために〜


最近、『注意欠陥/多動性障害(ADHD)』という言葉を耳にすることがあります。「ADHD」であると医者の診断を受けた子が、特別視されることなく周囲の理解を深めていく対応について、具体的な手立ての中で考えてみましょう。

 <事例> 心配な行動を見せる裕太君(登場人物はすべて仮名)

裕太君は、愛嬌のある人なつこい表情で、元気にあいさつのできる小学校1年生の活発な男の子です。、しかし、小さい頃から落ち着きがなく、急にどこかへ行ってしまい、けがをしてくることもしばしばでした。また簡単な遊びの中でのルールが守れず、思うようにならないと口より先に手を出し、友達や兄弟にけがを負わせてしまったり、自分と他人の物の区別がつかず、他人の物を取ってきてしまったりと絶えず問題を起こし、親に心配をかける子供でした。3人目の子育てだったこともあり、裕太君の異状に気付いたお母さんが医者へ連れていって診てもらったところ、「ADHD」と診断されました。

幼稚園との引き継ぎの中で上記の内容を知っていた担任の小林先生は、裕太君を自分の教卓の近くの席にし、絶えず目が行き届くような配慮をしていました。しかし、いくら身の回りの整理をしてあげてもすぐ乱雑になってしまったり、友達とのトラブルの度に気を付けるよう注意をしてあげても毎日けんかが起こったりの繰り返しでした。また、小林先生がちょっと目を離したり、出張したりすると大騒ぎになっていることもしばしばでした。

入学後初めての参観日。小林先生は子供たちにいつもより早めに準備をさせておいたのですが、教室に戻ってみると、裕太君の机は乱雑に物が散らばった状態になっていました。早く準備させたことがあだになっていたのです。もうお母さん方が教室に入ってきており、整理してあげる時間はありません。小林先生は、「しかたない。そのままの姿を見ていただき、今後の対応を相談してみよう」と考えました。心配そうな顔で教室に入ってきたお母さんは、裕太君の机に目をやり、散らかっている様々な学習用具、おまけに脱ぎ捨てた靴下という光景を見て、暗い表情をしていました。授業中も時々大声をあげたり、席を出歩いたりしている裕太君をはらはらした様子で見ていました。
ADHDの子への指導で悩んでいませんか?授業が終わり、裕太君の机の中を見たお母さんは、宿題や家庭への便り等がくしゃくしゃと何枚も丸めて押し込まれている様子に、がっくり肩を落としていました。保護者会が終了するのを待って小林先生は、「ちょっとお話する時間をいただけませんか。」と声をかけました。お母さんの方も、お医者さんに薬を勧められているので学校の様子を聞いてから決めようと思っていたこと、学校からの便りを何にも見せないので困っていたことなどを話され、ぜひ個別の相談をお願いしたいと話されました。


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は福島県教育センターに帰属します。
福島県教育センターの許諾を受けて福島県教育委員会が加工・掲載しています。