福島県教育センター所報ふくしま「窓」 No.137(H14/2002.11)-027/036page
深く味わって「聴く」力を育てる授業の工夫
〜魅力ある教材の活用や展開の工夫による鑑賞の授業を通して〜いわき市立勿来第二中学校 教諭 佐 藤 和 子
T 主題設定の理由
私は「音楽を通して豊かな情操や感性を育む場」として日々の音楽の授業を実践している。
音楽科での表現と鑑賞の関連を考えた時、良い耳を育てることが教師の役割だと考える。よく聴くということは、全ての学習活動の始まりであり、音楽では、この聴取する力が基盤となり耳を澄ますことから始まり、歌を歌ったり、楽器を弾いたりできる『演奏する』という力と、即興も含め新しく音を生み出す『創る』という力の積み重ねにつながり、それが、基礎・基本の定着となる。このことから、教材曲をただ漠然と聞くことでその能力を育てるというのではなく、生徒の実態からどの場面で何を通しての指導が適切で成果が表れるかを考えた。本校の生徒は、音楽に対しての興味・関心が高い。表現活動では、特に歌唱表現においての意識の高さが現在の音楽活動につながり、自ら学ぼうとする姿勢も見られる。しかし鑑賞という点では聞かされているという状態である。
これまでに授業の導入段階で、新曲を活用しての「聴く耳を育てる」実践をしてきたことにより、注意深く聞こうとする生徒が増え、読譜力も高まりつつある。魅力ある教材を選択し、効果的指導を工夫し、鑑賞の授業を通して、生徒たちが音楽を主体的に深く味わって聴く力を育みたいと考え、上記の研究主題を設定した。
U 研究仮説
1 仮説
鑑賞活動において、次のような手立てを講じれば、生徒が主体的に深く味わって聴く力が育つであろう。
@ 魅力ある教材の選択
A 効果的な鑑賞活動のための授業の展開やまとめ方の工夫2 仮説のとらえ方
(1) 「魅力ある教材の選択」とは
生徒の実態に沿った意欲・関心を高めることができる音楽を教材として選,ふミことである。音楽の構成要素と楽曲のもつ曲想との関わりを意識して聴き取らせたり、聴きわけさせる活動では生徒の発達段階に応じた楽曲で、生徒が共感できる選曲であれば、自己のイメージや感情が喚起されると考える。また、鑑賞の喜びの中で音楽の要素が理解できる選曲でなければならない・オペラの曲は、複雑で洗練された音楽の仕組みであるため、特定の演奏形態に焦点を当てやすい選曲であれば、深く曲を理解しながら聴く力が養われると考える。
(2) 「効果的な授業の展開」とは
題材の中で特定の楽曲1曲のみではなく、学習目標に応じて複数の楽曲を用いたり、演劇や