福島県教育センター所報ふくしま「窓」 No.138(H15/2003.2)-015/036page
教育相談チーム連載 『実践 学校教育相談』
最近、隣の席の先生は悩んでいませんか
〜教職員のメンタルヘルス〜
最近、隣の席の先生の様子がちょっとおかしいと気になることがありませんか。今回は、健康で明るい職場を全員で協力し作るために、教職員のメンタルヘルスについて考えてみましょう。
<事例> 山下先生の憂鬱
香川先生は、最近隣の席の山下先生の様子がちょっとおかしいのではと気になっていました。
山下先生は、30代前半の男性の先生です。現在は中学校1年生の担任をしており、教科は社会を担当しています。その山下先生が、最近暗い表情でため息をついたり、話しかけても上の空だったり、とにかく元気がないのです。
「山下先生、最近とても疲れているみたいですけど、何か心配事でもあるんですか。」
香川先生はある日の放課後、職員室で山下先生にそう尋ねてみました。「ええ、その……。いや、別に何もありません。ご心配かけてすみません。」
「そうですか、それならいいんですが。」山下先生は日ごろから控え目で物静かな性格です。仕事ぶりは、放課後も生徒のために相談に乗ったり個別に学習指導に応じたりするなど、大変熱心です。香川先生は、山下先生の誠実さを同僚として尊敬しています。また、年齢が近く職員室では隣の席ということもあり、時折世間話もする仲です。だからこそ、山下先生の最近の様子が気にかかりました。
そんなある日、香川先生は山下先生が学級担任をしているクラスで授業があり、授業が終わった後で、生徒たちと雑談をしていました。
「このごろ、山下先生、何だかいらいらしていることが多いんです。」
「うん、前は笑顔が見られたけど、最近いつも怖い顔をしているよね。」香川先生は生徒たちも同じように山下先生の最近の様子をおかしいと感じ心配していることを知り、山下先生の憂鬱はやはり深刻なものなのではないかと考えました。
そこでく香川先生は、もう一度山下先生とじっくり話をしてみることにしました。
はじめは言葉を濁していた山下先生でしたが、「……自分に自信がなくなって。学級経営も他のクラスに比べて生徒たちが落ち着かないし、教科指導でも思うように成績を伸ばしてやれていないし。……自分は、教師に向いていないんじゃないかなって感じるんです。」
と胸の内を吐露し始めました。香川先生は、山下先生の憂鬱の深さに驚くと同時に、何とか力になりたいと思いました。