福島県教育センター所報ふくしま「窓」 No.139(H15/2003.7) -005/036page
カリキュラム研究チーム
思考過程を重視したきめ細やかな指導を
充実させるための工夫
1 はじめに
昨年度、カリキュラム研究チームでは、本県の学習実態を明らかにするため、研究協力校の中学生を対象にした調査を行い、「これまでの学力到達度調査結果の検証」、「数学をべースにした問題解決能力を測定するための総合的・発展的な学力試験の実施と検証」、「学習基礎調査結果の分析を基にした学習指導の改善の在り方」について研究を行った。
これらの調査研究から次のようなことが明らかになった。
・論理的文章全体の大意を把握する力は、どの学力層においても低い。
・学習のつまずき段階は、学力到達度によって異なる。
・問題解決能力の育成のためには、(注)スキーマの形成を重視した指導が大切である。
(注) ある事柄に対してもっている―塊りの知識。schema。今年度は、昨年度の調査研究を継続・発展させるために、さらに分析的に調査し、「個に応じたきめ細かな学習指導」の手立てについて研究する。
2 研究の概要
児童生徒の学力の現状として「覚えることや計算、文章の読み取りは得意だが、学習が受け身で、自分から調べ、判断し、自分なりの考えを持ち、それを表現する力が不十分である」、「学習習慣が十分に身に付いていない」ことがあげられている。
また、児童生徒が陥りやすい学習観は、結果主義、暗記主義、物量主義が中心であることが指摘されている。
これらの学力の現状や学習観は、いずれも「思考過程」を重視する学習よりも、「答えの正誤の確認」、「答えを出す手続きや断片的な知識の習得」、「単純な反復による習熟」を学習と捉える傾向が強いと考えられる。
また、上記の学習では、「知識の剥落現象をおこし、学力が定着しないのではないか」、そして、このことは、「学習方略(方法)と一体化しており、ひいては学力と関連性があるのではないか」と考える。
多くの場合、学習観は、児童生徒が色々と吟味した上で自分で選び取ったというよりも、「何となく」または「しかたなく」採用されているように感じられる。
学習、結果(答え)さえあっていればよいというものではなく、その結果を出すプロセス(思考過程)が大切であり、結果の正誤よりも、プロセスを考えることが学習の充実につながる