福島県教育センター所報ふくしま「窓」 No.139(H15/2003.7) -011/036page
【在り方生き方を育む進路指導】
「進路指導」は「進学指導」や「就職指導」にとどまるものではありません。
高等学校学習指導要領には「生徒が自己の在り方生き方を考え、主体的に進路を選択することができるよう、学校の教育活動全体を通じ、計画的、組織的な進路指導を行うこと(第1章総則)」「進路の選択などの指導に当たっては、ガイダンスの機能を充実するようホームルーム活動等の指導を工夫すること(第4章特別活動)」とあります。また同解説には「ガイダンス」について「生徒のよりよい適応や選択にかかわる、集団場面を中心とする指導・援助であり、生徒一人一人の可能性を最大限に開発しようとするもの」と記されています。
これらのことから、「進路指導」とは好ましい人間関係の形成や自己の生き方に関する情報提供や案内、それらに基づいて行われる学習や活動等であることがわかります。では、具体的にはどのような取り組みが考えられるでしょうか。
1 自己理解の援助
「将来どうなりたいのか」を生徒に問い掛け、考えさせるだけでは十分な進路指導をしたとは言えません。大切なのは「自分にはどういう面があるのか」「自分の長所は何か」「自分に出来ることは何か」等について自分自身を見つめる時間とそれを表現する機会を設けることです。
例えば将来の夢や長所、過去の体験や趣味等を「自己紹介文」という形で表現させると、自分自身を客観的に見つめる良い機会になります。
仕事に対する興味関心はありながらも、対人関係がうまく結べないために離職する生徒もいます。高校在学中に構成的グループエンカウンター(予め用意されたエクササイズを通して、「本音と本音の交流」を目指す活動)やアサーショントレーニング(相手のことを尊重しながらも自分の言いたいことを言う態度を育む活動)等に取り組むことも将来の人間関係形成の一助となります。
2 職業理解の援助
専門高校の生徒であっても職業の種類や仕事の内容についての理解度は必ずしも高いとは言えないのではないでしょうか。教師が各種資料を提示することも大切ですが、生徒自身に知っている職業を挙げさせたり、一つの製品が出荷されるまでにはどのような職種の人がその製造過程にかかわっているのかをグループで考えさせたりすることも職業理解を促す上で大切です。
また、アルバイトで正社員と同額の収入を得ることがいかに難しいかを労働時間や年収を実際に計算させながら考えさせるのも良い方法です。
3 社会状況理解の援助
高校生の就職難が声高に叫ばれていても、自分の置かれている状況を冷静に受け止められない生徒もいると思われます。自校の状況だけでなく、全国的に見て自分の在籍する科からの就職率はどの程度なのか、自分の在籍する科からはどのような仕事に就いているのか等をWebぺージで検索させるなどして把握させることも重要です(文部科学省や厚生労働省のぺージが参考になります)。また、フリーター歴が長い者を正社員として採用することは企業が敬遠していること、アルバイトの賃金が下がる傾向にあること等、生徒の身近な話題を例に社会状況を話すと生徒の興味関心も高まります。