福島県教育センター所報ふくしま「窓」 No.139(H15/2003.7) -013/036page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

  めば、得るものも大きいからね。じゃあ、お互いに1分間ずつやってみよう。くれぐれも相手を否定するようなことは言わないでね。それでは用意スター卜!
互いを褒める
生 徒 1 すごいなあ、8人家族なんだ。楽しそうでいいねえ。
生 徒 2 夜何時までも起きていられるなんてすごい!私なんて10時には眠くなっちゃうよ。
生 徒 3 そろばん習ってたの?どうりで計算が速いと思った。うらやましいなあ。
   
加藤先生の予想以上に、生徒達は相手のことを一生懸命ほめてくれました。ほめられた生徒は頭を掻き、頬を赤らめながらもまんざらでもない表情でその言葉を聴いていました。
   
加 藤 自分のことをほめられてどうだった?
生 徒 恥ずかしかったけど、ちょっとうれしかったです。
加 藤 どうしてうれしかったの?
生 徒 自分のことを分かってもらえたような気がしたんです。それと、自分も捨てたもんじゃないなあって思えたんです。
加 藤 それは良い体験をしたね。ところで、今ほめてもらったことを自分の将来像に結びつけられないかな。
生 徒 うーん……、私は「話し方がさわやかだね」って言ってもらったんです。自分で はあまり意識してなかったけど、ひょっとして人と接する仕事が自分に合ってるのかなって思いました。
加 藤 なるほどね。じゃあ他のみんなも今日友だちからほめてもらったことを頭に置いて、来週の進路講話に臨んでみよう。

加藤先生のホームルームを廊下からのぞいていた川島先生は、生徒の反応に少し胸をなで下ろしました。同時のこのような取り組みを重ねていくことで、生徒は将来像を描けるようになるのではないか、そのためにも進路指導に「自己理解の援助」を取り入れることは大きな意味を持つのではないか、と改めて思いました。

【おわりに】

今回は高校生の進路指導について「自己理解の援助」に焦点をあてて考えてきました。

自己肯定感の高い生徒は、自分の持つ「資源」や長所をよく理解しているため、物事に対して自信を持って意欲的に取り組むことが出来ます。
従って自己肯定感を授業やLHRを通していかに高めていくかということが「進路指導」を進める上で重要なポイントになります。

生徒の自己理解を促しつつ、職業理解や社会状況理解に役立つ情報を的確に伝える。親や教師は生徒に「考えさせる」だけではなく「一緒に考える」という姿勢を持つ。このようなことが将来像を描きながら進路を選択することができる生徒を育むためには大切です。

 

◇引用・参考文献

進路指導と育てるカウンセリング 國分康孝編 図書文化
エンカウンターで進路指導が変わる 片野智治編 図書文化
実践サイコエジュケーション 篠塚信編 図書文化


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は福島県教育センターに帰属します。
福島県教育センターの許諾を受けて福島県教育委員会が加工・掲載しています。