福島県教育センター所報ふくしま「窓」 No.139(H15/2003.7) -015/036page

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― 「人・道・歩み」 


”チーズの騎士”の称号を待つ


料理人 加 藤 義 文 氏に聞く

 

 

料理人 加藤義文氏

県立美術館近く、静かな緑地公園の傍らに瀟酒なたたずまいのフランス料理店があります。
今回は、「西欧風煮込み料理シェ・ル・ラグー フロマージュ」のシェフ加藤義文氏にお話を伺いました。

料理の世界へ入ったきっかけは………
私は、小さい頃からよその家に泊まりに行くのが好きで、その家で食事をするのが楽しかったようです。そんな時、母が「昨日はどんな料理だったの?おいしかった?」と聞くようになり、子供ながらに料理を味わうようになったのかもしれません。

ある日、NHKの「きょうの料理」を見て、これなら自分にも作れると思い、初めて料理をしたのが4、5歳の時だと思います。つくしんぼうのおひたしでした。すごく苦しかったので母に尋ねたら、「あく抜きをしないとね。」と言いながら苦くないおひたしを作ってくれました。
その味は今でも忘れられません。それから、毎日テレビを見ては料理を作っていました。

子供の頃に食べた味は、素直に記憶に残ります。ですから、子供さんに出す料理の方が気を遣いますよ。

仕事を支えたきたものは………
上京後、フランスに渡り、料理の勉強をしながらよく遊びました。技術は日本でも学べます。
料理の背景にある、その国の文化や雰囲気を感じ取る貴重な経験でした。「目的ある遊び」は大事です。

修業時代に言われたことは、「お客様は、私たちの生活を保障し、私たちを育ててくださる人たちです。自分が納得いく料理だけを提供し、お客様に楽しんでいただけるよう努めなさい。それができないのなら料理人をやめなさい。」当たり前のことですが、知らない料理、お客様の質問に答えられない料理は出しません。

また、料理には、作る人の性格・感情・体調が現れます。気性の荒い人は攻撃的でトゲのある料理を作り、穏やかな人はなんとなくふわぁとした料理を作る。つまり、お客様は料理人本人を召し上がっているようなものです。自分のためにもお客様のためにも、感性を高め、常にベストコンディションを維持することが仕事を支えてきたのではないかと思います。

店を移転したのも、静かな場所で作った料理を、静かな場所で召し上がっていただきたいと考えたからです。店に飾ってある船越保武のデッサンは、その時の気分で違って見えますよ。

伝えたいことは………
いろんな人に料理を教えたいと最近思うようになりました。出張料理教室では、スーパーで一緒に材料を選び、その家にある器具で料理をします。そのときしか作れない料理では意味がないんです。何回か作るうちに料理の幅が広がり、その家の味になっていく。料理を作る、食べる、もてなすという、「食」の楽しみが福島にも育ってほしいと思います。

人間にとって、「食」は大切なものです。食べ方によっては、体型や体質を変えたり、性格が変わったり、病魔に襲われたり、死を招くこともあります。食べ方に注意してください。また、1日に1回は家族全員で食事することをおすすめします。家族の食事は、"愛"というホスピタルです。少しでもそのお手伝いができたら幸せです。


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