福島県教育センター所報ふくしま「窓」 No.139(H15/2003.7) -016/036page
― 豊かな教育実践 ―
科学的な電流・電圧概念を形成させる指導
〜課題構成及び指導過程の工夫を通して〜会津若松市立一箕小学校 教諭 石 井 雅 彦
T 主題設定の理由
門馬・吉田の「中学生の電流理解に関する実態調査」1)によれば、電流に関する問題に対して「問題によって異なる考えを導入しているか、もしくは一貫性のある考え方を保持していない」つまり「状況依存的」な考え方をしている生徒が約半数であるという。本校生徒も例外ではなく、実態調査の結果極めて「状況依存的」であることが明らかになった。実態調査の概要は次の通りである。
(1) 対象:2年6組 34名
(2) 実施期間:7月(電流の学習前)
(3) 設問の詳細:図1、表1参照
(4) 明らかになった実態
@ 一貫した「電流モデル」を持っている生徒は3割で、残り7割は状況依存的な考え方をしている。
A 一貫した「電流モデル」を持っているすべての生徒は「V.一方向電流負荷・導線減衰型」に該当し、電流は抵抗や導線を流れていくうちに減衰していくと考えている。それ以外の生徒の中にも、電流の保存性の概念を確固として持っている生徒はいない。
B 電流の向きを一方向ではなく「衝突型」とする生徒がほぼ半数いる。
C 回路の同一性を理解している生徒はごく少ないなお、門馬・吉田はこれらの設問の解答状況を検討した結果、設問2、3、4の解答の傾向から生徒達の中に6つの「一貫した考え方」が存在することを見いだし、電流モデルとして類型化している(表2)。さらに、「状況依存的」な考え方は学習後もほとんど変化していないことや、たとえ誤った考え方であっても「一貫した考え」を保持している生徒の方が、「状況依存的」な生徒よりも、学習後に正しい概念を獲得する傾向が強いことを指摘している。
中学校理科の目標に「科学的な見方や考え方を養う」とあるが、「科学的」とは「事実そのものによって裏づけられ、論理的認識によって媒介されているさま。原理的に体系づけられているさま」(広辞苑)であるから、状況依存的な考え方をしているという生徒の実態をおさえたうえで、科学的な考え方をどのようにして養っていくのかということは、理科の指導上重要な課題であると考え、本研究主題を設定した。
U 研究仮説
1 研究仮説
電流の学習において、十分な試行錯誤を