教育福島0116号(1986年(S61)11月)-007page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

尚、現在 総務庁青少年問題審議会長

文部省教科書検定審議会委員文化庁文化財保護審議会専門委員(天然記念部会長)国立極地研究所評議員等の要職にあり、また、日本生態学会・日本衛生動物学会・日本応用動物昆虫学者・日本動物学会・北日本病虫害研究会の各名誉会員に推戴されている。

 

の素材はすべて野生の動植物に求めたものであるということである。

ともあれ、人類だけが生物的自然の世界と技術的創造の世界をもっている。科学技術の飛躍的な進展とともに、この技術的創造の世界は自然の開発を伴ないながら益々向上していくことであろう。しかし、この技術的創造の世界といっても生物的自然の世界を舞台として築きあげられるものである限り、その素材をこの世界にもとめていることと共にその摂理にもとったものであってはならない。自然との調和が唱えられ、自然の保護が叫ばれる所以はここにある。正しい文化の向上はそこから生まれる。

 

ところで、冒頭に述べた金魚や牛は言うまでもなく技術的創造の世界の産物であり、店頭にみるカブトムシも人為的に多量に生産されたものであって規を一にしている。森の中で発見したカブトムシ、小川のメダカや鯨は生物的自然の世界の要素となっている生きものである。前者は人間の手厚い管理の中で生きっづけ、後者は自然の摂理にその生存をゆだねている。

天然記念物に指定されているニホンザルの生息する自然公園で、じゃれつくサルに傷を受ける観光客が多くなり、治療費を求める問題が提起されたことがあった。なぜこのようなことが起ったのであろうか。事の起りはサル可愛さに観光客が餌を与えつづけたからである。自然環境の中で木の実をあさり、谷川で小動物を捕えていたサルは観光客の与える餌に馴らされ、客を見れば餌をねだる、いわば家畜的な性質をもつようになったからなのである。庭にまぎれこんだタヌキ可愛さに餌をやりはじめるなど似たようなことは随時随所でむしろほほえましいこととしてニュースにとりあげられている。

人間がつくりあげたイヌやネコ、小鳥、その他の生きものは、人間が餌を与え、手塩にかけて愛護しなければならないが、野生の生きものを愛護することは、直接餌を与えることではなく、この生きものが生活している自然の環境を護ってやることにほかならない。われわれ日本人はこのことをよく認識できるようにはなっていないと思えてならない。

 

最近になって初等教育において自然観察の必要が提唱されはじめた。自然と自然に生きる生きものを知るようになづてほしいと思う……バランスのとれた文化の向上に役立ってもらうために……。

 

沖縄ケラマジカの調査にて(筆者)

提 言

 

提 言

 

 

 


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は情報提供者及び福島県教育委員会に帰属します。