教育福島0128号(1988年(S63)01月)-014page
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特選入賞論文
児童一人一人に郷土をみつめさせる実践の試み
福島市立飯坂小学校教諭
齋藤吉成
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一、研究の趣旨
(一) 研究の動機
子どもは、地域の中で様々な体験をし育つものである。ところが、近年、貴重な生活体験が少なくなってきており、自分の郷土をよく知らない子どもが増えてきている。
こうした現状を前に、社会科では、地域を取り上げた種々の取り組みがなされているが、既習の郷土の学習を記憶に留めていない児童が多く見られる。特に、郷土の農業についてはあまり印象に残っていないようである。
そこで、第五学年の立場から郷土の農業を核に教材化を進め、児童一人一人が「郷土を学び」、「郷土で学ぶ」ことによって、自分の郷土についての理解を少しでも深めさせていきたいと考え、標記の主題を設定した。
(二) 問題点
○ 意識的に郷土を見つめようとする視点が育っていない。
○ 学習する地域が広がると、郷土の学習をする意識が薄れてくる。
○ 特に、農業単元の学習に対する興味や関心が希薄である。
○ 地域の見学に出かけても、めあてからそれがちである。
(三) 原因
○ 郷土の事例を扱っても、それをもとに一般化させようとしすぎるあまり、郷土の特色を児童に色濃く伝えられなかった。
○ 教師自身が地域(郷土)の人々の生活の営みをよく知ろうという意欲に欠けた。
○ 地域教材の年間指導計画などへの位置づけが不明確だった。
○ 郷土の学習の中で、児童の郷土に対する暖昧な認識を十分にゆさぶつていなかった。
二、研究の仮説
(一) 仮説設定のために
(1) 「地域」と「郷土」
児童が生活する地域を、一般的に、「地域」と呼ぶが、これは教師側の呼称といった感が強い。児童側からは、自然の息吹を感じさせ人間の生活の営みを想い起こさせる「ふるさと」「郷土」といった方がふさわしいと考える。本論では主に、教師側から「地域」、児童側から「郷土」という言葉を採った。
(2) 地域教材の開発と郷土の教育
学習する地域が拡大しても、児童が生活する地域の視点から教材を具体化することが大切で、地域教材の開発の際に、次の点から地域の実態と計画された教材を見直す必要がある。
○ この地域には、ねらいを達成できる素材はない。
○ この地域にしかない特色ある素材を教材化すれば、ねらいが達成できる。
○ この地域のみならずどの地域にでもある素材だが、教材化すればねらいが達成できる。
従来、地域教材の開発では第二の点に力点が置かれていたが、郷土を見つめさせようとする時、第三の点からも開発することが必要であろう。
(二) 仮説
第五学卒の農業生産活動を扱う単元を中心に、郷土の実態を踏まえ、いくつかのねらいに即して開発した地域教材の数単元への導入を図って、教材に合った指導を積み重ねていけば、児童一人一人が郷土の農業についての興味や関心を高め、自分の郷土をより深く見つめる力が育っていくであろう。研究の構想
本研究の構想を次のように立てた。
(一) P(プラン)の構想
ねらいを明確にして地域教材を開発することが大切で、その導入によって指導計画が改善される。また、ひとつの実践を経て、Pが変更される場合もある。
(二) D(ドウー)の構想
地域教材は身近な見慣れた事象だけに、児童の認識を十分にゆさぶる必要がある。また、郷土の事象を深く追究させていくためには、郷土を詳しく調べることの必要感を抱かせることが重要になる。
なお、毎時「自分の考え・授業の感想」を書かせ、情意面も含めて内容に賞揚、励まし、修正、補強、意見などの赤ペンを入れて指導にあたり、一人一人の学び方を深める手立てとしていく。
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