教育年報1962年(S37)-058/169page
つぎに,教育先進県の視察については,「当面の対策」
第7項によって,富山県を視察した。
1) 日時は11月11日から18日まで
2) 視察員は
指導主事 米沢茂美 指導主事 佐藤政己 梁川中学校長 遠藤力 平野小学校長 佐藤厚友 野田中学校教諭 酒井邦雄 杉田小学校教頭 金沢正 3) 視察先は
富山県教育委員会学校教育課
黒部市桜井中学校,同じく黒部市教委入善町飯野小学校,
富山県理科教育センターおよび産業教育館
4) 視察要領は,一つの学校を2日間にわたってじゅ
うぶんに視察する。視点は「学力向上についての当
面の対策の各項目とし,できるだけ地教委,PTA会員,
その学校教職員と話し合うこと等を配慮し,
幅ひろく,きめこまかに視察する」ことである。
この視察に関して報告書の提出がなされ,かつ報告会
がひらかれたが,(1月14日)
1) 学習指導の個別化において
2) 小学校教育研究会,中学校教育研究会等の自主的
研究体制の確立とその活躍において
3) 県総合開発計画のなかに位置づけられた長期教育
振興計画において
4) 教職員の気風ならびに県民性等について
5) 現場の自主性に密着する指導体制において等々
今後われわれが他山の石とすべきものを多く提出さ
れたことは,ありがたいことである。
(2) 「授業充実の手引」の編集発行
つぎに,指導主事会議において数次にわたって指導面
の検討をかさわるとともに,指導資料の中核として,現
場の授業の問題点を検出し,その解明を主眼として「授
業充実の手引」を編集頒布することとした。
授業充実の具体的な方策は,この手引書にくわしくの
べるが,授業の充実のためには,外的な諸条件―施設設
備の問題教職員の配置組織の問題,勤務体制の合理化の
問題,事務量軽減の問題,行事調整の問題,授業の実質
的時数確保の問題,研修体制確立の問題等々―をととの
えることと,内的な条件―いわば授業の体質改善―をと
とのえることと2面があることはあきらかであるが,前
者については,管理の問題解決と相関連するので,手引
書では後者について考察し,できるだけ具体的に,現場
に役立つようこころがけている。
(3) 小,中学校長会の動向
以上のような,事務局がその運営の展開に呼応して,
県下小,中学校長会が,6月,二本松大会以来,学力向
上対策をいずれも研究テーマとして,研究をかさね,そ
れぞれ本年度の一応のまとまりを,研修会をひらいてと
りまとめられていることは,まことにありがたいことで
あって,おたがい相たずさえて,共通のねがいである本
県児童生徒の学力の向上をゆるぎなくすすめていきたい
ものと念願するものである。
(4) 教育研究団体の育成
自主的研究団体の助成の問題も,学力向上の問題解決
に大きい関連をもつものである。したがってその補助額
も相当に本年度は増額され,40万円が計上されたのであ
るが,国の指導もあり,本年度は,14団体に対して補助
をすることにしたのである。しかしながら地域における
自主的研修体制の確立の問題およびその自主的な研修活
動を活発化する問題等の解決,これをささえる補助金の
大幅増額等は,のこされた問題として明年度に期待する
ところのものである。
4 学力調査の結果の活用と今後の課題1
それはとにかく,本年度全国一齊学力調査の結果は,
小学校,中学校とも,学力はやや上向きの姿勢になった
ようである(注3)。このことは,おたがいにうれしい
ことではあるが,いっそうこの傾向をすすめる努力をし
なければならないことは当然である。
なお,当初において懸念されたことが絶無であるので
はない。正しく学力向上の問題をうけとめてもらいたい
と願わずにはおられない。
授業の研究も,各方面に実によくもり上ってきつつあ
ることは,まことによろこばしい。しかしながら,ぼう
大な仕事に安易にたちむかって,いたずらに疲労を重ね
ることになってはならないと思う。日常の授業のなかで
こどもとともに探究していくことのつみかさねが,まこ
とに貴重な結果をもたらすであろうことを,だれもが知
っているはずなのだから,それを実践していかねばなら
ない。
そして,現場の自主性は,最も大事にされなくてはな
らない。自主的な学習をこどもにさせようとする教師自
身が,自主性をよく身につけていなければならない。指
導助言の立場とは,この自主性に密着していなければな
らない。このとき,現場にいきいきとしたすがたがあら
われ,いきいきとした授業が展開され,充実し,したが
って学力は次第にゆるみなく向上していくであろう。