研究紀要第62号 「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第1年次」 -033/049page
な長い根,時計のなった木を描き,洞察力の不足,攻撃的態度,常に時刻を気にしていることを示唆している。
本人は,強い家庭不適応を示し,自分の家庭に不満をもち,親とうまく合わずしっくりしないと思っている。規範逸脱傾向が強い。
ー社会的次元ー
● 家族構成
● 家族関係
複雑な家族構成にあり,厳格な祖父が何につけ実権を握ってきた。父は,不規則な勤務の会社員で,家庭ではたいへん口数が少なく存在がうすい。母は,農業のかたわらパートタイムの勤めをしている。
父と祖父母,母と祖母,本人と父母・祖母とは,あまり会話のない関係である。
● 家族成員の性格と養育態度
祖父母は,死別や離婚の不幸が続き,両親が働きに出ていたので,孫の養育にあたる。その態度は,溺愛的で一貫性が欠如しがちであった。本人は,幼児期に親に抱かれることをいやがり,「父母に甘えた体験がない。」という。
父は,自分の感情や考えをほとんど表わさない。しかも,父親としての自覚がうすく,社会規範などを子供たちに十分に教えこんでいない。母は,周囲へは必要以上に気をつかい,自己主張を控えるが,母親としてのやさしさに欠ける。
本人の養育について,両親の不一致が強い。父親は,形式的で理づめで接しやすく,子供たちの気持ちを理解しようとしない。母親は,何か問題が発生すると本人へは口うるさく注意するなど,過干渉,厳格,拒否的態度をとりながら,盲従,過不安,矛盾など混乱した対応がみられる。それが,本人の口うるさい母への不信,反抗を生みだしている。
● 教育に対する関心
両親とも,教育に関しては関心が高く,姉2人と同様,いわゆる有名校へ進学させようとし,また,運動技能にもすぐれていたことから,長男である本人へ一身に期待を寄せてきた。
ー実存的次元ー
● 尊敬する人物はいない。生育の過程で,親や教師への不信を抱いてきている。しかし,将来は,「先生になりたい。」。高校は,いわゆる有名高校への進学を志望している。
5. 診断
幼少時からの両親への不信,家庭への不適応感などが,「いらいらして,おもしろくない」という心境を生み出し,深夜徘徊や集団を組んでの問題行動に走らせた。また,家庭・学校不適応で,