福島県教育センター所報ふくしま No.93(H01/1989.11) -016/038page

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A:調べてきたんだろう?(やさしく)
B:調べてなんかこないよ!(反抗的に)
A:手を挙げなかったろ!うそつきだろう!
(強い語調で)
B:めんどくさい!(なげやりに)
A:授業中だぞ!


。場面・・・次の日の朝、廊下で

A:おはよう!今日はやってきた?(やさしく)
B:なんで今,答えるの!(にらみつけて)
A:今,知ってた方が授業中指名できるだろう?
B:関係ねえよ!(ふてくされて)


。場面・・・授業中、教室で

A:B子さん,発表してください。(冷静に)
B:・・。なんで,私ばかりだよお!
A:希望の高校に合格させたいからだよ。
B:ほっといてよ!(いいかげんに)
A:そうは,いかないよ。(やさしく)


。 ふりかえり

 反抗されるとムカムカしてきて,先生もそうだったろうと気づいた。先生は私を高校に合格させたいと思っているから指名をし勉強をさせようとしているのだと先生の気持ちが分かった。さらに,以前に,テストの結果の正答部分について先生に誉められた時,うれしかった気持ちも思い出した。反抗するのは,先生に特別に認めて欲しいから甘えていたのかも知れないと気づいた。その後,ふりかえりを基にカウンセリングを継続した。反抗する態度も和らぎ担任とも素直に話し,進路について相談できるようになった。


事例III《いやなことを「いやだ!」と拒否でき,友人関係の改善が見られてきた小学生》

。主訴…万引き(小学5年男子)
。趣旨…「いやだ」と言えるようにさせる。
。主題…rいやだ」と言えた時の気持ちについて
。技法…自我訓練法
  A:本人
  B:カウンセラー……友達の役
。場面…スーパーで

第1セッション

B:おい!ガム取ってこいよ!
A:・・いやだよ。(弱々しく)
B:約束したくせに!嘘つき!!
A:だって……(小さな声で)


。 第2セッションから第4セッションまで実施。語調を強め,拒否する役をカウンセラーがモデルを示しながら演じ,本人へ拒否する役をとらせていった。

。 ふりかえり

 各セッション毎にふりかえりを行った。第4セッション後,「いやだ!」とはっきり言えた。胸がドキドキしたがスーツとした気分になったと言い,笑顔が見られた。その後,同じテーマでロール・プレイングを繰り返した。自分の意志が少しずつ表出できるようになり友人関係も改善されてきて,現在,万引きは見られない。

5.おわりに

 人間関係の調整をする上でロール・プレイングを活用した結果,感情体験を通して気づきが深まり,問題の改善,解決の方向を見いだすことができた。すなわち,教育相談の中で感情レベルでの理解を必要とする場面を的確に把握し,そこに積極的にロール・プレイングを活用することが望ましいと考えられる。それには,カウンセラー自身がロール・プレイングに習熟することが必要となる。


※参考文献
・教育現場におけるロール・プレイングの手引
          (外林大作監修,誠信書房)
・講座サイコセラピー9ロール・プレイング
          (台利夫著,日本文化科学社)


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